ハーメルン
ガンダムSEED Destiny 白き流星の双子
第10話 アーモリーワンの戦い 4



「ちぃい!!厄介なものを!!」

閃光が奔る。

稲妻が響く。

光が飛散して、迸っていたビームは無へと帰った。その光の幕を突き破る様に、一機のモビルアーマーが宇宙に線を描いた。

「あれにはビームが効かないのか…くっ!!」

レイの放つインパルスのビーム。ほとんどが掠めるにとどまるが、相手は時折〝ワザと〟止まってインパルスのビームを受け止める。その攻撃の全ては、メビウスによって展開される「プライマルアーマー」の前に弾き出された。

『ザフトの新型も形無しだな!その程度では!!』

型落ちのメビウスの中で、ネオはハッと鼻でインパルスをなじるように切り捨てる。あの程度の力では、この機体に傷を付けることは叶わない。それに、インパルスなど眼中にはないのだ。

「メビウスを使ったり、セラフのバリアを使ったり!!そちらさんはどちらさんなんだ!!この野郎!!」

ネオは頭上へと目線を向かわせる。いま相手にするべきなのは、声が聞こえてくる相手。流星と渾名される目の前の敵、ただ一人だ。

メビウスは迫るラリーの機体に呼応するかの様に挙動し始めると、高度な交差を繰り広げる。幾度の交差の中で、ラリーがネオの機体の背後を捉える。ビームがダメならばと、メビウスストライカーの脚部に搭載されているコンテナからミサイルを撃ち放った。

『甘い…!!』

その攻撃を見たネオは、フレキシブルスラスターを逆噴射し、さらに機体を回転させながら迫るミサイルの群れの中を潜り抜けると、今度はラリーの背後へと回ったのだ。

「くぅう…がぁっ…!!こいつの…動きは…!?」

それを黙って見ているわけでもない。ラリーもネオの動きに合わせてインメルマンターンを繰り出し、今度は背中の取り合いへと戦闘機動が発展していく。

『アッハッハ!!そうだ!!それでいい!!続けてくれ!!俺に見せてくれ!〝特異点〟たる力を!!』

ひとつの挙動。ひとつの機動。いくつもの交差。それを積み重ね、研鑽していく中で、ネオは笑みを浮かべていく。そうだとも。全てはこの瞬間のために培ってきたのだ。その間にも交差は増していき、機動も翻る機体も、その全てがネオの五感を刺激していく。

重ねるたびに近づいていく。

遠く見えていなかった流星の姿が、イメージが、感覚が、妄想と現実が折り重なり、近く〝本物〟になっていく。

『最高だ!!貴様ぁああああ!!』

故にネオという男は歓喜する。

戦う中で証明されていくのだ。

戦いを重ねる中で朧げだった形が作り上げられていく。

ああそうだとも。

自分が〝ネオ・ロアノーク〟であるという事実が!!

「なんだこれは…これが…本当の戦争なのか…!?」

ラリーとネオの常軌を逸した空戦を前にして、レイは何も出来なくなっていた。ビームライフルを向けようとするが、その動きが不規則で、予測ができない。

シミュレーションと模擬戦で培ってきた自信も技術も、この戦いの前では全くの役立たずだ。

迂闊に撃てば戦局を混乱させるばかりではない。操縦桿を握るレイの手は震えていた。あの動きの牙がこちらに向けば、インパルスと言えど無事では済まなくなる。そんなことすら容易に想像できるほどの戦いだ。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/5

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析