ハーメルン
ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】
compromise
●オデュッセウスの旅路
ホワイトベース方面に派遣したエージェントと違って、ヴィッシュ・ドナヒュー……いやクロトワ参謀は役に立ってくれた。
やはりジオンの占領下で動かすのは、ジオンの人間の方が動き易いのだろうか。
彼は紆余曲折の果てに、一人の客人を伴っていた。
あちこち放浪し、情報を集めたりコネを結んでくれる彼には頭が下がる思いだ。もちろん狙って潜り込ませたトロイなので、反省はしていない。
「大佐。クロトワ大尉が女性を伴っておりまして……」
「会おう。何か情報を……いや、誰かの使者かもしれん」
アイナらしき女を連れて戻ってきた。
兄想いの妹がそこまでする理由。それを考えた時、情報部が利用しているリストを一つ選びだした……。
「わたくしはアイナ・サ……」
「挨拶の前にこれを渡しておこう」
現れた女はやはりアイナだった。
だが実物を見たくらいで感動する気もない。澄ました顔で書類を二つ放り投げる。
一つ目はシローと原作に準拠してよろしくやってる姿。
ガルダが残ってるので温泉ではないが、カメラに向かってシローが盾の様に立つ姿だ。
二つ目はアフリカ圏内にある、情報部が利用している病院のリストだ。
「これは……」
「アイナさんと言ったか。あなたの名前はそうだな……。極東の文字で愛那というのではないかな? 結婚してからの姓名は、天田・愛那。アマダ少尉の負傷を知って訪れた」
メモに漢字の当て字を入れつつ、偽名と適当な言い訳を考えた。
「アマダ少尉の奥さんならば、連邦基地に訪れても不思議はない。もちろん、その家族もね」
「……っ。それは……」
アイナの顔が一瞬引きつる。
もちろんシローの奥さん扱いしたことではない。そちらは戸惑う中で多少、顔を赤らめる程度だ。
家族が病院に訪れてもおかしくはないと言った辺りで、顔をこわばらせた後で元に戻そうと奮闘していた。その様子にニヤリと笑いたくなるのを、背中を向けることで誤魔化しておく。
「時に、アマダ少尉の実家はサイド2でな。毒ガスの中をかろうじて逃げ出したのであれば、内臓や放射線の療養も当然だろう。間違っているかな?」
「い、いいえ……。否定はしません」
おそらく、ギニアスの病状が大きく悪化したのだ。
それを予想して病院のリストと、訪れるためのカバーストーリーをでっちあげると、アイナは否定をしなかった。
否定はしないが肯定もしない。
だが、ギニアスの病状が相当重いことは隠しきれない。
考えてみればインドシナも良い環境ではないし、移った中東も似たようなものだ。
「これは話を聞くための手付金という事でしょうか? 言っておきますが降伏の条件には……」
「そのリストは情報部が利用している場所だ。迂闊なことでは詮索もされんから気にせんでよろしい。……しかし、本命の件で譲る気は一切ないがね」
そもそも驚かして、状況を知りたかっただけだ。
姿を隠してでは連邦製の薬をもらうのが精々だろうし、ギニアスを押し込めることまでは期待できないだろう。譲歩する気はないので渡しても惜しくない物を渡したに過ぎない。
第一、迂闊に技術を渡してジャブローに突撃されたら問題である。
せめてコネのある政治家を別の場所に移して、連邦政府を自分寄りの政権で立て直せる準備をしてからにして欲しい。
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