ハーメルン
ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】
終戦に向けて

●花も実もある嘘が必要な時もある
 ガルマの国葬ならぬドズルの国葬が行われた後、世界中を二つの噂が飛び交った。
一つは連邦軍がいよいよ徴兵に踏み切り、一千隻・百万人態勢で断固ジオンを殲滅するという話。
もう一つはその前にジオンが降伏し、戦争はクリスマスより前に終わるという話。

この噂の酷いところは、どちらも連邦軍が勝利するという願望に近い予測を基本とすること。
そして……出所が共に同じという詐術である。

「宇宙ではア・バオア・クーとグラナダ、地上では中東と北米。戦力比は我らが有利です」
「ふふふ……」
「くくく……」
 ニヤニヤと笑うジャマイカンに対し、ジャミトフとコリニーは底意地の悪い笑顔を浮かべた。
ジャマイカンの言う戦力比とは、連邦とジオンのものではない。

レビル率いる宇宙軍と、地上の処分を任されたコリニーの部隊のものだ。
規模としてはレビルの方が大きいが、相手の小ささという意味ではコリニー隊の方が有利。
敵が弱いから勝てたという流れにしないためには、宇宙軍より良い戦果である必要があるだろう。しかしジャマイカンには希望があった。

「准将閣下の推測では、ジオンにもソーラー・システム級の秘匿兵器があってもおかしくないと。で、あれば損害比率は圧倒的なものとなります」
 ソーラー・システムは原作ほどの数が揃ってなかったが、それでも十分に機能した。
正確にはモビルスーツ隊が原作以上なので、要塞に取りつくまでの露払いには十分だったということだ。

こちらが可能だったのである、ジオンも当然可能だろう。
原作ではデギンが折れて勝手に和平を結んだために、無駄な場所に撃ち込んで戦果が減ってしまった。
この世界ではその線がなさそうなため、差し引きで似たような損害に成るだろう。結果的に宇宙軍の被害は甚大、地上軍は特に問題ないままである。

「宇宙軍がサイド3を陥落させる前に、是非とも決戦を挑んで北米を落としたいところですな。その前に中東を処分せねばなりませんが」
「北米、北米だと? くくく……はーっはっはっは!」
 楽しそうに未来を語るジャマイカンだが、途中からコリニーが笑いだしてしまった。
あまりのことに、ジャマイカンは目をむいて驚くほかはない。

「か、閣下?」
「くくく……。ジャミトフよ、教えてやれ」
「はっ」
 様子を伺うジャマイカンに、コリニーは笑いをこらえながら顎で先を示した。

「ジャマイカンよ。尋ねるが貴様……何時から決戦が行われると信じていた?」
「はっ!?」
 訳が分からなかった。
地上を任されたコリニー隊は、残存するジオン軍を討伐するのが目的だ。

中東を早期に制圧し、北米で決戦せねば何処で戦うと言うのだろうか?

「最後まで戦えばジオンの国民に故郷は存在しなくなる。復讐に燃える我が軍が一切合切を消し去るやもしれん」
「全面戦争とはそういうものでは? それに降伏する可能性も……」
 反論しながらジャマイカンも気が付いた。
既に大勢は決しているのだ。連邦が勝ってジオンが敗北するのは間違いがない。

ならばどこかで手打ちを行う可能性があり、ジオン軍は必死で降伏ではなく和平を望むための条件を探しているところだろう。

「路頭に迷うジオンの連中だけでなく、連邦の経済には明るいニュースが必要だとは思わんか? ……サイド3と引き換えに北米を取り戻す算段は付いているのだ」

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