楽しむ蛇
元士郎が打鉄弐式に使えるというか、今後人類が宇宙に進出して手にする有用な物質を回収、加工できる会社を用意してあるらしく、そこにネジ一本から開発することになった。その際、デザインだけは私が再設計をし直して渡したのが元士郎に抱いてもらった翌日。そして今日は金曜日。
「早いですね」
「ダミー会社で従業員はオレの分体50人だからな。とりあえず説明するけど、装甲は地球種が初めてワープ航法に適した装甲材で、絶滅するまで加工のしやすさと採掘量で民間の宇宙船では最後まで発展系が使われたコスモナイト製。ミサイルとエネルギー火器には大抵の宇宙人や宇宙怪獣を吹き飛ばしてきたスペシウム。推進が一番困ったが、とりあえずはマキシマ式光圧推進システム。それらとは別に地球種が誇った武装や推進、装甲に魔力を増幅して纏わせる魔術炉心を搭載だな。あと、コアの方も弄ってネットワークからは分離しているから通信系統は別に積みなおしてある」
「なるほど。すごいということ以外はさっぱりわかりませんね」
「簡単に説明すれば装甲を抜ける武器がない。火力がクリーンですごい。推進剤がいらない。魔術で簡単に強化可能」
「オーパーツですか」
「オーパーツだ」
「どこまでそんな鉱石を取りに行っていたんですか」
「スペシウムは火星、コスモナイトは土星の衛星のタイタン。光圧推進システムと魔術炉心は地球。太陽圏内で揃えた」
「とりあえずは試乗ですね。付き合ってもらえますか?」
「もちろん。夜間のアリーナ利用の許可も取ってある。納得のいくまで付き合おう」
「ええ、お願いしますね」
そして、夜間にアリーナに向かい、記録機器を全てカットしてから結界を張って試乗を行う。予想以上に魔術炉心が強力だったために急遽リミッターを用意してもらった。他にもスペシウム弾頭弾ミサイル、スペシウムライフルもエネルギー効率を考えると威力が大分高い。コスモナイト製の装甲も普通のラファールなどが使用するライフルではシールドエネルギーが減らない。光圧推進システムはPICと組み合わさることで爆発的な加速力と速度を生み出せるようになった。
「結論から言って、一機で世界にケンカを売れますね。魔力が続く限り稼働するんですから、元士郎とパスがつながっていれば文字どおり無敵ですね」
「むしろパスが繋がっていることを前提の機体に仕上げたからな。コピーしても欠陥ではない欠陥でコピーが無意味になる。元から欠陥品なんだからな」
「意地悪にもほどがありますね。そういえば、聞き忘れていたのですが、この世界に神秘は?」
「ほとんどないな。三流魔術師とか、なんとなくで気を扱っているのとか位だな。不自然な位に聖剣や魔剣からも神秘が失せている。世界の根幹的な部分で致命的なことでも起こったっぽいな」
「そうですか」
「まあ、オレたちには何の問題もない。それよりも試運転はもういいのか?」
「ええ。確認できましたから。そろそろ上がりましょう。消灯時間が近づいてますから」
「そうだな。明日は久しぶりのデートだしな」
「楽しみですね。前世の最後の方は寝たきり生活でしたから、庭に出る程度しかできませんでしたからね」
「オレはそれでも充分幸せだったんだけどな。ソーナからは色々と貰い過ぎだったから」
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