ハーメルン
虹の橋がかかるまで―女神となった強面青年の勘違い冒険譚―
3)目覚めたら全部美少女になった
その時、カミナは目を覚ました。
何かがおかしい。
未だに微睡み続けるカミナはまぶたを降ろしたまま、その違和感を探ってみた。
まず最初に柔らかい手でもってずっと誰かに頭を優しく撫でられているような感触が伝わり、その下では人肌の温もりを持った何かが彼の枕になっている。
そしてカミナのその大きな腕の中にそれぞれ、同じく人肌ぐらいの温もりの何かを感じる。そしてそれらも、どうやらカミナの身体に優しく抱きついているようだ。
(ああ、すごい、幸せな夢だなぁ……)
生来、人から恐れられて生きてきたカミナは、それらのあまりの現実味のなさから思わずそれを夢だと思った。改めて気を落ち着けるべく彼が大きく息を吸い込むと、強い草木の匂いに包まれて女の子特有の、甘い香りが彼の鼻孔をくすぐった。
(あれ、夢なのにどうして……)
未だに覚めぬ夢心地のままカミナが少しだけ手を動かすと、その先になんだか柔らかいものがある。もにもにふわふわ。もにもにふわふわ。なんだかすごく癒やされる。
するとどうだろう。
「きゃあ、くすぐたぁっい♪」
「……こしょばゆい。」
「あはは、イタズラ好きなお手々さんだね~。」
自分の周囲で女の子達がはしゃぎ合う声が聞こえてくるのだ。
(……ふむ。)
彼はしばらく固まった後。
(もしかして夢じゃないのか!!)
「っっ!?」
大きく目を見開いて、飛び起きる。
「わぁ、起きた!!」
「……カミサマ起きたね。」
「おっはよーご主人さま。いい夢見れたかにゃ?」
起きざまのカミナにあらためて嬉しそうに抱きついてくる腕の中の幼気な女の子たち。さらに後ろから少女がふざけた感じで親しげに尋ねてくる。
抱きついてきた少女たちはどちらもすごく可愛らしい。
右腕には花の妖精のような服をきた緑の髪を右でくくった、同じく緑のぱっちりおめめの表情豊かな女の子が。左腕には白と黒が砂利のように入り混じって灰色に見える、独特の柄の前開きのローブを身に着けた白い髪を左でくくった、半開きの綺麗な銀色の目をした落ち着いた雰囲気の女の子。どちらも年の頃は小学生の中学年位だろうか。
そんな子達が自分を恐れず嬉しそうに抱きついてくる。
もちろん見覚えなんてまるでない。後ろから聞こえる少女の声にもだ。ついでにいうと彼の目に飛び込んできた周りの景色にも当然彼は覚えがなかった。
そこは深い深い森の中。乱雑に所狭しと木々が競うように生えており、余りに密集したそれはそこに木漏れ日すら容易に届かせず、辺りは一面薄暗い。そこには幼き頃より山の中で身体を鍛えたカミナにもわからない植物達が多く見受けら、ここが異世界だと実感できた。
そして森の中には軽自動車が通れそうな程の幅の林道が造られており、その辺りだけ少しだけ他の場所よりも日が差している。その脇でどうやらカミナは眠っていたらしい。身体には立派な紅い布が毛布代わりにかけられていた。……彼女達がかけてくれたのだろう。
しかし彼にとって今の大事はそんな事ではない。目の前にいる少女達が何よりの大事だ。いまだ混乱したままの脳みそから、カミナは今の素直な気持ちが口につく。
「ああ、おかげ様で。……最高の気分だった」
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