------5日目
九校戦5日目、新人戦の2日目の今日はクラウド・ボールの予選と決勝。アイス・ピラーズ・ブレイクの予選が行われる。
アイス・ピラーズ・ブレイクの予選は1回戦12試合が午前に2回戦6試合が午後に行われる。尽夜は1回戦の第一試合の予定だ。
午前7時。
試合開始までまだ3時間あるが尽夜はエンジニアのあずさとともに控え室に向かっていた。あずさは眠そうに目を擦りながら尽夜の制服の裾を握って歩いている。
「あずささん、着きましたよ」
「………ついたんですかぁ〜?」
到着したことを伝えると腑抜けた声であずさが返事をした。足取りがおぼつかないあずさを備え付けられている椅子に座らせて尽夜もその隣に座る。
「………よつばくんがぁ、むちゃぶりするんですからぁぜんぜんねれなかったじゃないですかぁ〜」
CAD調整を尽夜に任された昨日、あずさは一睡もできていなかった。かくんかくんと首を揺らしながら覇気のない声で文句を言っている。
昨日尽夜に任されたCADは起動式が全然入っておらず、尽夜が希望する起動式を1から設定しなければならなかった。その一つ一つが調整する側としては難易度が高く、結局要望をすべて達成できたのは午前6時。調整中は興奮や使命感から出るアドレナリンによって意識はハッキリとしていたが調整終了とほぼ同時に強烈な眠気があずさを襲って、今に至っている。午前6時すぎに尽夜は作業車を訪れ、あずさをこのまま寝かせたらマズいと悟り朝食に連れていき、ご飯を子供の世話をするように文字通り食べさせ、控え室まで自分の裾を持ってもらうようにした。
今のところ、一高の生徒には会っていないため変な誤解を生むことはなかった。
「あずささん、試合前になったら起こしますのでここでなら寝ていただいていいですよ」
「ほんとですかぁ……ならそうします」
言うやいなやすぐに隣から規則正しい息遣いが聞こえてきた。
尽夜は、あずさが調整したCADを掴んで調子を確認する。
(違和感なし、希望した起動式も全て入っている。若干、起動に引っ掛かりが発生するが気にする程でもない。むしろ希望した高難易度の起動式をすべて入れ込んでのこのレベルまで不具合がほとんどない調整をたかが9時間程でやってのけたのは高校生にしては上出来すぎる)
彼はあずさがここまでの調整をするとは思っていなかった。希望した起動式をすべて設定出来てなくともしてくれた範囲で戦えば良いと思っていたし、不具合があったとしても普通の1年生魔法師に遅れを取ることは全くない。だが良い意味で予想を裏切ったあずさのお陰でハンデ?をつけずに戦うことができる。『この時のためにしっかり勉強してきた』と言うあずさの言葉は嘘ではなかった。
確認をしていると尽夜の肩にポスッとあずさの頭がしだれかかってきた。尽夜はあずさを起こさないように自身の膝の上に頭を移動させる。CADを置き、手であずさの髪の毛を梳く。それを受けて気持ち良さそうに尽夜の腿にあずさがスリスリと頬をこすりつけた。
-----一高男子ピラーズ・ブレイク控え室
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