------司波家
司波家に到着してから時計の長い針が一周したぐらいに、三人は揃って食卓につく。
「尽夜さん、簡単なものですみません。今度いらしていただいたときはもっと腕によりをかけて作りますからね」
深雪が作ったのは、鰆の照り焼きがメインの和食だった。
深雪は簡単なものと謙遜しているが、見た目は鮮やかで、炊かれた米は柔らかいが程よく硬く、味噌汁は短い調理時間ながらしっかりとした出汁の味わいが感じられるものであった。料理を日常的に作り、更に作るという行為に満足するのではなく己の研鑽を怠ることのない人物のみが辿り着けるほどの味わい。
外食が勿体無く感じられる程深雪の腕は申し分ない。
「いや、この食事も十分美味しいよ。深雪以外の作る料理が霞んでしまうよ」
お世辞抜きに言う尽夜の言葉に、『ほんとうにそうなればいいのに…』と望み、更に研鑽を決意する。
「尽夜。それで今日来たのは?」
達也が二人の会話を見計らって、本題を促した。
「九校戦にちょっかい掛けてくるかもしれない奴らについて知りたいかと思ってな」
達也は警戒のレベルを一気に最大限まで引き上げた。
「情報は確かなのか?」
「昼はああ言ったけど実際はほぼ確実」
「本家からか?」
「そうだよ」
「なぜ十師族の2人に話さなかった?」
「さあ?なんでだろうね?」
『知らない』と言葉には出すが顔は薄ら笑みを浮かべているため、とても信じられるものではなかった。
「なぜ俺には話すんだ?」
「ん〜もし何かあったら達也と片付ける方が早いし、知らせた方が確実に深雪を守れると思うからな。それに国防軍は恐らく掴んでいるからその動向も知りたいのが理由かな?」
もっともらしい理由をつらつらと並べる尽夜。彼があまりにも自然的に話すことが遂には達也に奥底の本当の理由については見抜くことは叶わなかった。
達也がしばらく口を閉ざす。
無音の音楽が空間に緊張をもたらしていた。
「『無頭竜』だよ」
尽夜が口を開く。そして1つのある組織の名前を口にする。
「なに!?国際犯罪シンジゲートか!?」
たかが高校生の対抗戦に手を出すのか?と疑った達也だがその考えはすぐに改めた。高校生といえども魔法師の卵、それにその大会にはその世代のトップクラスが集結するのだ。テロを仕掛ければこの国の人材面は大きく打撃を受けることになるだろう。
「そいつらは九校戦で友好的な犯罪シンジゲートと賭けをしてるそうだ。だから何かしらの外的工作が入るかもしれない」
「この事は叔母上は?」
達也は真夜が今現在、どのような判断を下しているかが気になった。ここまで掴んでいるなら九校戦前に片付けることも容易なのではないかと考えたのだ。
「一任された」
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