-----九校戦、1日目
直接の観客のみでも、10日間で延べ10万人。1日平均1万人のギャラリーが競技を見に来る。有線放送の視聴者は少なくともその百倍以上となるだろう。
プロの試合が行われる人気スポーツ競技に比べれば少ないとはいえ、これだけの人間が注目している。
開会式は華やかさよりも規律を強く印象付けるものである。魔法競技はそれだけで華やかさを伴う競技であるため、セレモニーをそこまで華美にする必要はない。長々とした来賓の挨拶もなく、九校の校歌が順に演奏された後、すぐに競技に入った。
今日から10日間、本戦男女各5種目、新人戦男女各5種目、計20種目の魔法競技会の幕開けである。
1日目の種目は本戦のスピード・シューティングの決勝までとバトル・ボードの予選である。
「深雪、他の1年女子達がずいぶん眠そうだけど昨日は眠れなかったのかい?」
カクカクと先程から1年の女子たちが首が落ちてるのを見かねて、尽夜が隣に座る深雪に問いかけた。
深雪は他の女子とは違い、目元がおぼつかない様子はなかった。
しかし、深雪は尽夜の問いかけに昨日のお風呂での出来事を思い出して顔を逸らし、頬を少し染めた。
「ちょっと、みんな楽しみでして部屋で盛り上がってしまいました」
深雪が早口で捲し立てる。
言葉通りに受け取った尽夜は納得した態度を取る。
「深雪はちゃんと寝たようだけどもちゃんと寝なきゃいけないよ。寝不足は体にも美容にも良くないんだからね」
「……………はい」
この時、尽夜は深雪が小さく欠伸をしたことに気付くことはなかった。深雪の手が自身の太腿を力強く抓っていたのはここだけの話。
「尽夜さん、お兄様、そろそろ会長の競技が始まります」
深雪は話題を変え、これから行われる第一競技に出場する真由美へと視線を向けた。
午前の競技は真由美がスピード・シューティングをパーフェクトスコアで予選突破、摩利がバトル・ボードの予選突破と第一高校の予定通りの結果となり終了した。
午後の競技まで1時間ほどの休憩が取られる。
「尽夜、付いてきてくれ。みんな午後の競技までには戻るから席を取っておいてくれないか?」
達也が尽夜に声をかける。意図を察した尽夜は頷くと席を立つ。
「わかったわよー」
エリカの語尾を伸ばした声が達也の耳に届く。
2人はその場を跡にし、ホテルに戻った。
警備の兵士に案内され、ホテルの一室に通される。
「来たか」
中に居たのは、達也の九重八雲に教えを受けた兄弟子、独立魔法大隊少佐、風間玄信とその部下である男女。彼らは共に一服しているようだった。
だがその顔は達也の横の存在によって、和やかのムードが消えていた。
「風間少佐、お久し振りですね。沖縄事変以来でしょうか?」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/7
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク