ハーメルン
それでも月は君のそばに
第13話

「ハァ! タァ!!」

 俺は地下鉄構内に沸いたノイズを片っ端からパンチやチョップを駆使して叩き潰していく。ノイズは容易く弾け飛ぶが、いかんせん数が多い。
 今日のノイズは地下鉄の路線に現れていた。
 ノイズを逃がさないために俺と奏と翼は別々の場所から路線に突入し、二課の指示でノイズを掃討しながら移動中だ。

「シャドーチョップ!」

 大岩をも両断する手刀の一撃でノイズは砕け、俺はまた別のノイズに跳びかかる。 
 地下鉄の路線内に多量に現れているため崩落の危険性があるから大技は使えない。そのため地道な駆除作業である。
 しかし、こうして入ってみると地下鉄の路線というのはまるでゲームのダンジョンのようだ。暗い洞窟で魔物に襲われるシチュエーションと似ていることに気付き、俺は苦笑する。

「未来は今頃、響と一緒に流星は見れているかな?」

 ノイズを処理しながらポツリと俺は呟いた。
 これで響の隠し事の一件で『寂しさ』を抱えていた未来も、少しは楽になってくれれば……そう俺が考えたその時だった。

「ッ!!?」

 ゾクリと何かの悪い予感が背筋を駆け抜ける。
 いわゆる『虫の知らせ』のようなものだがキングストーンのおかげなのかその精度は未来予知並み、俺がこれを感じるときにはほぼ確実に悪いことが起こると決まっていた。
 そして案の定、今回も悪いことが起こる。

『響ちゃんの周辺にノイズ反応!』

『なにっ!?』

『同時に未確認のエネルギー反応が!』

『響ちゃんのガングニールの反応から、ノイズと未確認物体(アンノウン)と交戦に入ったものと思われます!!』

「バトルホッパー!!」

 二課からの通信を聞いた瞬間、俺は反射的にバトルホッパーを呼び出していた。バトルホッパーに跨り、アクセルを全開にする。

『どこに行くつもりだ、信人くん!』

「決まってるだろう、弦十郎司令(おやっさん)! 響のところだ!!
 物言いだったら後でいくらでも聞く! だからここは任せた!!」

 俺はノイズを薙ぎ倒しながら出口を目指しバトルホッパーで疾走する。
 今日、この時間では響のいる場所には未来もいるはずだ。響と未来……どちらも決して失ってはならない幼馴染の危機である。

(待ってろ! 響! 未来!)


~~~~~~~~~~~~~~~

 
 突然のノイズ、そして白い鎧の少女の登場。ノイズに怯える未来を背に庇い、響は目の前の少女に声を張り上げる。

「あなたは誰! それにこのノイズたちはあなたが操ってるの!?」

「そんなこと今からあたしに攫われるお前に知る必要があるのかよ、『融合症例』」

 響の言葉に鎧の少女は鼻で笑って答えるが、響はその聞き捨てならない言葉を聞き逃さなかった。

「『融合症例』!? どうしてそのことを……!?」

 『融合症例』とは、聖遺物と人が融合した症例……つまり響のことを指す言葉だ。
 だがこの『融合症例』については、特に厳重に秘匿されているのである。理由は簡単、聖遺物と人が融合可能でしかもシンフォギアのような強い力を操れると分かったが最後、様々な国でどこからか連れてきた少女たちの身体に聖遺物を埋め込むような人体実験が巻き起こるだろうからだ。

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