第15話
その日は夕方あたりから冷たい雨が降り出していた。
「嫌な雨……」
寮の自室でお茶を飲みながら何となくそれを眺めていた未来がポツリと呟く。その時、来客を告げるインターフォンが鳴った。
「こんな時間に誰?」
訝しみながら未来はドアスコープを覗き込む。
すると……。
「響!」
ドアスコープ越しにいたのは響だった。
即座に未来がドアを開けると、その姿に未来は目を見張る。響は雨に打たれずぶ濡れだったのだ。
「どうしたの響!」
ただ事ではないことを感じ取った未来は問う。そんな未来に、響はうつむきながらポツリと言った。
「……未来、入っていいかな?」
「わかった。 とにかく入って、響」
未来は響を自室に招き入れるとすぐにタオルを持ってきて響の身体を拭くが、響は為すがままで動こうとしなかった。
「一体何があったの、響?」
本格的に様子がおかしい響に、未来が再度問う。
響は答えない。しかし未来は辛抱強く響の言葉を待つ。
そしてどれだけか時間がたったころ、ようやく響は絞り出すような小さな声で答えた。
「ノブくんが……大怪我を……」
「信人が!?」
響から告げられたその衝撃的な言葉に、未来も顔を青くする。
「ノイズ!? それともこの間の鎧の女の子にやられたの!?」
未来は信人が巷で噂の『仮面ライダーSHADOW』の正体だと知っている。だから信人の怪我の原因になりそうなものを咄嗟に上げた。
しかしその時、うつむいていた響からボロボロと涙がこぼれる。そして続けて響から発せられたのは衝撃的な言葉だった。
「違う……違うの未来……!
私が……私がノブくんに大怪我をさせたの!!」
「響が……信人を!?」
そんなバカな、響が信人を傷つけるなんてそんなことあり得るはずがない……未来は咄嗟にそう思うが、響の様子は決して冗談や間違いのようなものではなかった。
「うっ……ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして響は跪いて、未来に縋り付くようにして泣き始める。
未来は何がどうなっているのかひどく混乱しながらも、震える響の肩を優しく抱きしめた……。
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どことも知れない湖畔、その桟橋で少女は1人湖を眺めていた。
彼女はあのネフシュタンの鎧の少女だ。今はネフシュタンの鎧ではなく、女の子らしいごく普通の服を身につけている。
その彼女が考えるのは、この間の『融合症例』のことだ。
(『完全聖遺物』の起動には相応のフォニックゲインが必要だとフィーネは言っていた。
あたしは『完全聖遺物』の『ソロモンの杖』を起動させるのに半年かかずらった。でもあいつはそれを目の前であっという間に成し遂げた。
それだけじゃない、『レーヴァテイン』の力を無理矢理でもブッ放して見せた……)
『レーヴァテイン』から放たれるあの圧倒的な力を持つ紅い光を思い出し、身震いする。あれは完全に『ネフシュタンの鎧』の力を超えていた。
「化け物め……!」
思わずそんな言葉が口に出る。
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