ハーメルン
やはり伝説の餓狼達が俺の師匠なのは間違っているだろうか。
少年は、闘いの結末を見届ける。
まるでダメージを感じさせない足取りで、不敵に笑い立ち上がった学ランの兄ちゃん。
こういう時、テレビの中継とかだと、
アナウンサーが「解説の○○さん今の攻撃、撃ち気に逸った草薙選手の若さがでましたね」等としたり顔で言うんだろうな。
それを受けて「そうですね、しかし今の一連の流れボガード選手の老獪さが光っていましたよ、あれはボガード選手が草薙選手を撃たせるように誘導したんですよ。」
と言って解説が始まったりして、上手い人の解説は、なるほどと思えるんだがな、下手な人だと精神論に終始して鬱陶しいんだよな。
「へへっ!流石に伝説の餓狼と呼ばれるだけの事はあるな、結構効いたぜ。」
立ち上がり首をコキコキと鳴らしながら言う学ランの兄ちゃんだか、そのセリフからして効いているとは思えないんだがな。
「まだまだこんなもんじゃあ無いぜ俺はよ、勿論お前もだよな京!」
「へっ当然!漸くエンジンが温まって来たところだ、行くぜテリー!」
「OK! Come on京!」
リング上で互いに言葉の掛け合いをしながらも、仕切り直しとばかりにファイティングポーズを取り直す二人。
気合の叫びを響かせ、再び始まる二人の男の超接近戦、開幕序盤の再現の様な展開かと思われたんだが。
さっきとは違い、二人の打撃は徐々にだがヒットし始めた。
顔面をボディを、二人の拳が蹴りが、
互いを捉える。
ビシバシと、打撃の音が響く度二人の顔が歪み、呻きの声が微かに漏れる。
だがそんな状態にも関わらず、二人の顔には笑みが浮かんでいて、まるで二人してもっと打って来い、当てて来いと言っている様で。
俺にとって殴られる事は、痛い事で苦しい事、身体だけじゃ無くて心まで傷付いて行くようで、死なずとも死んでしまって行くようで、現に俺は心が諦めていて、心が死にそうになっていて………。
なのに何でリングの上の二人はあんなにも…………。
この時俺は、それが……知りたくなって…
「フッ!フッ!」
学ランの兄ちゃんの呼気と共に繰出された連続蹴りは、テリー兄ちゃんの顎へとヒットし、その身体を宙へと浮き上がらせる。
「うぉりゃあぁ!」
追撃とばかりに学ランの兄ちゃんが、
腕を振るい炎を発しながら宙へと飛び上がり、その爆炎でテリー兄ちゃんを撃ち落とした。
炎にその身を焼かれながら、マットへ倒れ込むテリー兄ちゃんの姿に、俺は絶望感を味わう。
だがテリー兄ちゃんは、直に立ち上がった。
若干のダメージは負った様だが、その身体には火傷を負った様な形跡はまるで無い……、どうなってんのあの炎?
だが、ダメージは確実に受けている筈だよな、どんな感覚なんだあれ。
「パワーウェイブ!」
「喰らえっ!」
テリー兄ちゃんは、右腕を振り上げ拳にエネルギーを溜めて、屈む込む様に身を曲げマットへその拳を叩きつける。
学ランの兄ちゃんは、身体を斜に構えて腕を大きく下方斜め前方へと振り抜く
。
気のエネルギーと炎のエネルギー。
遠間からエネルギー波を撃ち合い、マットの表面を疾走する、その二つのエネルギーは、ぶつかり合い瞬間マットの上でスパークし相殺された。
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