第七回 ハロウィン
※この物語は、フィクションです。
「ゴ主人ー、ハロウィンって何?」
「いやオマエ、去年のその時期にはもう住み着いてたよな?」
わたしが飼い化けイタチになったのは8月のことなので、間違いなく既に住み着いていた。なのでその時期にもいたのは確実なのだけど、如何せんその文化に触れた記憶がない。
「いやだってほら、まだ配信とかもしてなかったし。そうなると交流もないから、知らないことがあってもおかしくなくない?」
「その分ネットにはどっぷりつかってたんだから、見てると思うんだけどなぁ」
と言いながらゴ主人はスマホを取り出す。
「絶対調べてるでしょ」
「世の中には、聞くより見た方が分かることもあるんだよ」
「面倒なだけでしょ」
「そうともいう」
人に説明することくらい、面倒がらないで欲しい。
とまぁそれはそれとして、表示された画像を見る。コスプレをした人がたくさんいた。
「コスプレイベント?」
「日本では、もうそういう立ち位置になってる気がする」
「日本以外だと?」
「今もそうなのかは分からんが、コスプレをした子供たちが近所を練り歩き、お菓子を強請るイベントだ」
何それ意味が分からない。
「キーワードは、『トリックオアトリート!お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!』だ」
「強請るっていうか、強請ってるじゃん」
つまり、お菓子がない人を狙い撃ちすれば確実にいたずらできるイベントなわけだ。何それ面白い。
「大元は宗教的な……それこそお盆みたいなイベントだったらしいけど」
「お盆かぁ。っていうことは、死者が帰ってきたり、亡者が群れを成したり?」
「一気にホラー感が増したな」
わたしは反射的に、百鬼夜行が町中を練り歩く光景を想像した。
「いやぁ、集まる妖怪によっては不気味になりそう」
「火車とかいたらわかりやすいよな。垢嘗めとかも」
「果たして、今のコスプレ集団に紛れ込めるのだろうか」
言われて、仮装した集団の中にガチ妖怪が混ざり、混成百鬼夜行が形成される光景を想像した。
これは、うん。いいかもしれない。わたしのような妖怪が姿を変えることなく、紛れ込める状況。人と妖怪の垣根が取っ払われる、一日限りの交流会。
「そしてそいつらが、お菓子を求めて脅しにかかる」
言われてつい、そんな夢の集団がお菓子を求めて練り歩く集団に変わってしまった。いやまぁ、それはそれで妖怪らしいのだけど。悪戯好きが多いみたいだし。分かりやすい妖怪の知り合いいないから、しらんけど!
「いやそれにしたって酷いでしょ、もうちょっと何かして妖怪」
「でも、ぬらりひょんってそんな感じじゃないか?」
ぬらりひょん。
百鬼夜行の主とされる、おじいちゃんの妖怪。
人の家に勝手に上がり込み、茶をすすって帰る。
「ぽいなぁ……やりそうだなぁ……」
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