ハーメルン
カスミトアケボノ 「図書館」編
17話 音のする方へ3

「暴動を続けるつもりなら、私たちが実力で抑え込みます」
雪音が言うと同時に、剣を一文字に振り抜く
ヴォンという音に、暴徒の先頭を切っていた人たちが後退りしたが、言い返してきた
「と、「図書館」が人造人間に奴隷扱いしていなければこんなことはしない!」
「…であるとすれば、私たちは奴隷扱いは受けていない。主たる冬風夜斗には、娘のようによくしてもらっている」
桜音がそう言いながらガトリングキャノンの砲身を回転させる
エンジン音のようなものが辺りに響き、嫌でも注目させる
「それでも「図書館」を非難するのであれば、私たち騒霊自ら鎮圧させていただきますわ」
三人の背後の空間に亀裂が入り、隙間から機械でできた四足歩行の飛龍が現れた
人工恩恵保持者にかかっているセフティの役目を果たすのが、この飛龍だ
桜音のものは赤く、雪音のものは黒く、愛音のものは青い
「零號騒霊こと、《破壊者》雪音」
「初號騒霊、《略奪者》桜音」
「弐號騒霊、《捕食者》愛音ですわ」
飛龍がそれぞれの頭上から地面に突撃し、彼女らに吸収されるかのように粒子化して消える
恩恵が起動し、あたりの空気の重みが増したように感じて、暴徒たちはまた後退りした
「わ、我々は君たちのことを思って…!」
「傍迷惑な思いもあったものですね。交渉の余地はありません、潰します」
雪音が真っ先に飛び出した
剣を振り抜きざまに、反応のいい人間が撃つ銃弾を剣の横っ腹で払い落とす
「《破壊者》執行モード、デストロイ!」
『執行モード、デストロイ』
雪音の声に合わせて剣に霊力が圧縮されていく
それが濃縮され、普通の人間の目に見えるほど輝き始めた
「派手に死んでください」
雪音の冷たい声と同時に、剣が真横に振られた
剣に乗っていた霊力が放たれ、咄嗟にしゃがんだ人間以外の上半身から上を塵芥に変える
「外しましたか…。桜音、次お願いします」
「了解。《略奪者》執行モード、オブザーブ」
『執行モード、オブザーブ』
桜音が前に出て、ガトリングキャノンを構えた
中学生ほどに見えるほど小柄な桜音では扱いきれないような、巨大な砲だが…
「ファイア」
ガトリングキャノンからアームが展開し、桜音の後ろの地面に固定される
反動を殺すための機構だ
そして桜音は、《略奪者》により拡張された視界の中で、機銃ともいえるガトリングキャノンで掃射し始めた
これを想定してか、防弾ガラスの盾を持っているものもいたが、所詮防弾。戦車を破壊できるこのガトリングキャノンの前に意味はない
「愛音。装甲車はお願い」
「了解ですわ。芽生えよ、《捕食者》」
愛音が進み出て、桜音の前に立つ
もう人間側に戦意はないだろう。最初2万人いたデモ隊が、今では二千人ほどしかいない
「執行モード、プレデターフォーム」
『執行モード、プレデターフォーム』
愛音が手を突き出すと、愛音の影から何かが飛び出し、人間を喰らい始めた
万物を喰らいし存在を召喚し、従える
愛音は自分で捕食することもあれば、こうして間接的に捕食することもある
また、先日の調整により黒鉄のように万物を喰らう闇を放つこともできるようになった
騒霊の中では最も強力な異能を持つ
「…さて、終わりましたわね」
「指導者に告ぐ。次は、ない」
三人が武装を転送し、元の場所へと戻す

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