4話 デモンストレーション2
「ふむ。デモンストレーションとしてはこんなところで良さそうだ」
夜斗はそういって、魔族に突き刺した腕を抜いた
「ばけ…もの…!」
そう言って倒れ伏したのは、強固な肉体を持つ魔族だ
獣人の中でも鍛え上げられており、獣人改などと呼ばれているが、本質は変わらない
「化け物というのは、お前のようなものを言うんだが…ってもう聞こえていないか」
夜斗は踵を返し、歩き出した
「…クローズラインからのエマージェンシーコール…?」
クローズラインというのは、秘匿回線のことだ。命名はアイリスである
「俺だ」
『私だけど、今いい?』
「構わん。どうした、奏音」
『緋月の当主がそっちに行ってる。ちょっとやばいかも』
「当代最強と言われた、世界最古の一族か…。封印状態の俺じゃきついかもな」
『空間転移だから、すぐにくるよ』
「了解。と、来たようだ」
夜斗は《管理者》を起動し、大剣を召喚した
機械的な見た目をしており、所々溢れ出したかのように歯車がついている
その歯車がゆっくりと回転を始め、夜斗はその大剣を満足げに地面に突き刺した
「鬼が出るか邪が出るか…。まぁ吸血鬼だから鬼なんだけど」
大剣の柄の上に両掌を重ねて、来るものに備える
「…ここか…って、だいぶもう片付いているな」
「よう、緋月一族当主」
「…「図書館」の冬風…。じゃあ、この惨状は…」
「そういうことだ。襲われたから迎撃したにすぎん。まぁ、文句があるのであれば受け付けるが?」
大剣の歯車が夜斗の覇気に呼応するように回転する
転移してきた緋月一族当主、緋月霊斗は夜斗と大剣を眺めた
「それが神機、か」
「俺たち恩恵保持者がもつ、お前ら吸血鬼でいう召喚獣だ」
吸血鬼が恐れられる理由は三つある
一つは固有体積時間によって増減する膨大な再生力
何年経っても老いることがない不死性
そして、その血に宿す異界からの召喚獣
夜斗たち恩恵保持者は、その召喚獣に対応するために神機を作り、神機に恩恵を登録することで召喚を可能にした
神機の役割は恩恵によって様々だが、夜斗の神機は全魔力の無効化及び不死性の削除
しかしその機能を使うためには、莫大な霊力を神機に流し込む必要がある。今の夜斗は起動可能なほど霊力を持たない
「で、ここでバトルするか?」
「しない。俺は過激派を殲滅しにきただけだ」
そういって霊斗は両手を上げた
霊斗のパーカーが風に靡いてバタバタと音を立てる
「ならいいさ。今後とも、衝突がないことを祈る」
夜斗はそういって神機を格納庫へと転送した
格納庫は今のところ空を飛ぶ拠点の中にあるが、今後置く場所を検討することになるだろう
「…あ、俺は夜斗って言うんだ。以後お見知り置きを、ってね」
「俺は霊斗。知っての通り、緋月の当主だ」
「よろしくな、霊斗。俺たちは火の粉を振り払うので精一杯…ということにしとくかな」
「…嘘つけ。あれだけ派手に殺せるくせに」
「詮索は無用だ。互いにな」
夜斗は《管理者》を起動する
またしても巨大な時計が現れ、動き出す
「…!」
「戦いはしない。言ったろ。まぁ…何かと大変だろうけど、頑張れ」
そう言って夜斗は拠点へと転移した
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/2
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク