第11話 弐式さん、彼は犯罪者ですよ?
「なるほど……やはりそうか……」
モモンガは幻術で構築した人の顔を歪ませる。
村長宅の一室で、彼は様々な情報を得た。幾つかは弐式から聞かされた内容と同じであったが、情報精度が増したと思えば文句は無い。
リ・エスティーゼ王国。バハルス帝国。ドワーフの国。エルフの王国。ローブル聖王国。竜王国。カルサナス都市国家連合。そして亜人種国家。
どれもこれも聞いたことが無い名だ。
やはり、この世界は現実ではなくユグドラシルでもない。まったく別な世界らしい。
(この転移後の世界で、俺達は生きていかなくてはならないのか……)
自分とギルメン達。ナザリック地下大墳墓。NPC達。それらを抱えて世を渡っていかなければならないときた。正直、モモンガにとっては重荷である。誰かに代わって欲しい。
救いと言えば、ヘロヘロと弐式炎雷が共に居てくれること。ナザリック地下大墳墓が機能しており、NPC達が忠誠を誓ってくれていることだ。
スキルや位階魔法が使用可能で、レベル一〇〇の自分達の実力が発揮できることも大きい。
(俺達の諸々が通用しそうなファンタジー系世界だったのも助かるよな。それと十三英雄とかって話も聞かされたけど。そいつらプレイヤーなんじゃないの?)
転移後のこの世界に、アインズ・ウール・ゴウンのギルメンだけが飛ばされているとは思えない。他ギルドやソロプレイヤーなども転移して来た可能性があった。そこを考慮すると、当面はユグドラシル時代と同じぐらいは警戒していた方が良いのかも知れない。
(敵対プレイヤーに見つかることを考えたら、ユグドラシル金貨を軽々しく使うこともできないか。考えなきゃならないことが多すぎだ。誰か代わってくれないかな……)
両隣で座るヘロヘロと弐式にチラチラッと視線を配してみる。するとモモンガの気持ちを察したのか、双方とも視線を逸らしてくれた。どうやら『纏め役』から降りるわけには行かないらしい。
(は~。仕方ないか……俺の役目は、みんなが戻るまで、ナザリック地下大墳墓を維持すること。より強力にすること! みんなに恥じないように!)
幸いなことにギルメンは現状で二名居る。双方、百戦錬磨のベテランプレイヤーで、気心知れた友人達だ。彼らの存在はモモンガにとって、大きな助けとなるはずだ。
例えば、そう例えば彼らが居なかったとしたら。モモンガは、この部屋にて一人で……NPCが同伴したかも知れないが、村長から話を聞いていたことになる。
ゾワッ……。
寒気がした。
今考えたのは、十分にあり得た状況だ。だが……。
(前にも考えたけど、本当に俺一人じゃなくて良かった。一人にはならなかったんだ! だから、大丈夫! しっかりしろ、俺!)
内心で自分を叱咤したモモンガは、取りあえず話を切り上げることとする。ナザリックに戻って一息つきたいし、ヘロヘロ達の歓迎パーティーもやりたい。その前に、ここで得た情報から今後の方針を打ち合わせることも重要だろう。もちろん、ヘロヘロと弐式だけでなく、アルベドにデミウルゴスも加えて協議しなければならない。
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