第15話 TS少女と割とガチの死闘
Side.三人称
現状は、パッと見た限りでは、勝勢は1-Aの生徒たちに傾いたと言ってよかった。
緑谷と永久に加え、爆豪、切島、轟が合流。人数の面でも上回っている上、敵の戦力の1人である脳無を轟が凍らせて拘束している。
無論、残る死柄木と黒霧も決して油断していい相手ではないのは確かだが、それでもアドバンテージは生徒側にあると言えた。
氷、爆破、硬化、そして増強型が2人。豊富とは言えないまでも個性のバリエーションもあり、様々な状況に対応できるはずだ。
しかし、不利な状況に追い込まれている……と思われる側である死柄木は、焦るよりも露骨に不機嫌さを表に出すばかり。がりがりと首元をかいて悪態をつく。
「はぁ……全くどいつもこいつも……まあ、とりあえず脱出口が抑えられてるのはまずいか。脳無、爆発の小僧をやっつけろ、黒霧を取り戻す」
そう、手短に告げると、氷で拘束されて動けないはずの脳無が、ぐっと体に力を入れて動く。
途端、ばきんという音と共に……脳無の体の凍っていた部分が砕けた。しかし、脳無は先程炎に焙られた時と同じように、全く動揺どころか痛がる素振りも見せない。
驚く轟達の目の前で、脳無の体、割れて欠損した傷口から、びきびきと赤黒い肉が盛り上がっていき……見る見るうちに元通りに『再生』した。
その衝撃的かつグロテスクな光景を見ていて、驚きのあまり反応が遅れた爆豪。次の瞬間、死柄木の命令通りに、爆豪目掛けて脳無の拳が迫る。
――ビッ! ゴウッ!!
直撃すれば爆豪の首から上を爆散させていたであろうその拳は、しかし彼に当たることはなく……およそ人体が立てる音とは思えない、風を切る轟音と共に空振りしていた。
しかし、全く何にも当たらなかったというわけではなく……
「……あっ、ぶな!」
「てめっ……何してやがるデカ女!」
脳無の拳が振るわれる直前、爆豪を横から突き飛ばすようにしてかばい、自身も大きく上体を反らせて間一髪その拳を回避した……永久にかすっていた。
その腹部から胸の部分をわずかにかすっただけで、頑強な素材で形作られた永久のコルセット型スーツは千切れ飛んでいた。胸元を抑えるものがなくなり、永久の豊かなバストがぶるん、とこぼれ出て露わになる。
「っ……おい、大丈夫かよ爆豪! 栄陽院!」
「るっせぇ大丈夫に決まってんだろクソ髪!」
「私も大丈夫! けど、かすっただけでコレって……風圧、っていうか威力ヤバい。おっぱい千切れるかと思った」
「……軽口が叩けりゃ大丈夫か」
「け、怪我無いのはよかったけど、栄陽院さんその、胸! 胸出てるから! いったん下がってしまって……」
「いいよ別に、見られても減るもんでもないし……裸よりも隙見せる方がまずいでしょ、こいつらには。おっぱいやコルセットじゃなくて、今度は首から上が吹っ飛ぶよ下手したら」
そう言いながらも、永久は一応、学ラン型の上着のボタンを留めて前を閉じ、とりあえずトップレス状態になっている上半身を隠す。
それを確認してほっとする緑谷だが、依然として危機的状況は継続している。
死柄木は変わらず健在なのに加え、黒霧は爆豪から解放され、氷で拘束していた脳無も、再生を完了している。相変わらず表情、どころか感情と呼べるものを感じられない、不気味な沈黙を保っていた。
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