ハーメルン
TSから始まるヒロインアカデミア
第2話 TS少女と合否通知

 薄暗い部屋の中で、いくつもあるモニターに『実技試験』の映像が流れていた。
 机についてそれらをじっと見る、様々なコスチュームに身を包んだ……ヒーロー達。

 彼ら、彼女らは単なるヒーローではない。ここ『雄英高校』の教師陣……その中でも、今回の入学試験・一般入試の試験官として選ばれた者達だった。
 1つの町を模して作った広大な試験会場で実施されている模擬戦等の様子を、何台、何十台と設置されているカメラで逐一チェックしている。その目的は、不慮の事故による死亡者・重傷者を出さないためと……もう1つ。

 一般には公開されていない、『救出(レスキュー)ポイント』の審査を行うためだ。

 仮想敵ロボットの撃破ではなく、他の受験者の危機を助ける行為によって審査制でつけられるポイント。ヒーローに本質的に必要だと言われている、自己を顧みず他者を助ける精神性と信念の強さが得点になる。
 無論、この判断基準を見抜いて点数のためにそれを行う者も出てくるだろうが、それはそれで問題ない。その際の能力の高さも含めて評価対象なのだから。

 それらの採点も終わり、敵ポイントと合わせた実技試験の総合成績が最後に表示される。

 その中でもひときわ大きなモニターに、2人の受験生の姿が大写しになっている。

 1人は凶暴そうな笑顔を浮かべ、動きやすそうな黒のタンクトップで、両掌を爆発させながら、向かってくる敵を次々と破壊していく金髪の少年。

 もう1人は、おどおどとした態度で動きもそこまでよくはないものの、終盤見せた、他者を助けるために巨大な0Pt敵に立ち向かう度胸と自己犠牲の精神、そしてその際に発揮した驚異的な破壊力が印象的な、緑髪の少年。

『救出ポイント0で1位とはなあ……後半、他が鈍っていく中、派手な個性で敵を引き寄せて迎撃し続けた。タフネスの賜物だ』

『対照的に……敵Pがゼロで救出60Pt。アレに立ち向かったのは過去にも居たけど、ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないね……』

『しかし妙な奴だな……自身の攻撃の反動で莫大な負傷とは……まるで発現したての幼児だ』

 爆豪勝己と、緑谷出久。2人の少年は、対照的な評価点を持つ者達として比較されていた。
 暫く話が続いた後、画面が切り替わり、その片方には、黒髪に長身の少女……栄陽院永久が映し出された。

 丁度、素手の拳で仮想敵を2体まとめて薙ぎ払うように破壊したシーンが映されている。

『こちらもそうですね。敵Pのみで76点……点数は先程の彼に1歩及ばずですが、彼女は個性らしい個性を使用した様子もなく、単純な腕力のみで全て粉砕しています。見た目に現れない増強型の個性、ということも考えられますが……』

『それにしても強いな、脆く作ってあるとはいえ、金属製の仮想敵をほぼ全て一撃でとは……』

『ただ、動き方は完全に我流の喧嘩殺法だな。武術って感じはしねえ……ちと荒っぽいな』

『だがその分、きちんと自分の能力や欠点はわかっているようだぞ? 救出がゼロなのは、派手な戦い方に他人が巻き込まれるのを嫌って、誰もいない場所にどんどん移動したからだろう』

『周りが見えていないわけではないということか。まあ、だからと言ってさすがにポイントをつけるわけにはいかんが……しかしこの娘、苗字を見て思ったんだが、あの『栄陽院家』か?』

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