ショッピングモール→合宿
「どうして人に強制する? 民衆が上でヒーローが下なのか? だとしたら奴らは随分と勝手じゃないか?」
死柄木は『成長する敵』だ。
初登場時の彼には黒霧以外の幹部がおらず、チンピラ同然の配下を率いていた。
目的意識も希薄。
USJでオールマイトを狙ったのは、単に「一番強い奴を倒したい」という欲求だったと思う。
だけど、ステインへの劣等感が彼に疑問を抱かせた。
デクくんに疑問を問いかけ、答えを得ることで、彼は目標を手に入れる。平和の象徴を崩すことで混沌を作り出すという目標を。
それが原作の流れ。
――でも、この世界のステインは「悪のカリスマ」になりきれなかった。
割とあっさり逮捕されたせいで、死柄木は「負けた」とまでは思ってない。
デクくんがUSJで暴れなかったことで、彼への興味も薄くなってる。
だから、話し相手は私でも良かった。
だから、彼の疑問はベクトルが違っている。
根っこの部分は同じなのかもしれないけど。
「……そうですね。いつの時代も、人間は勝手な生き物です」
保須の一件でヒーローは盛大なバッシングを受けた。
『死者三名』。
この言葉が新聞でもテレビでもネットでも連呼され、怠慢だ失態だオールマイトがいなかったからだ、と言いたい放題に言われている。
扇動しているのはマスコミ。
だけど、騒ぎが大きくなったのは一般の人達の中に恐怖と怒りがあるからだ。
茶の間でみかん片手にテレビを見ながら。
さも当事者のように文句をいう。
そこに思うところがないかといえば、答えはノーだ。
「でも、あなたはただの犯罪者です」
死柄木は怯まない。
「法律がなんだ。あんなもの、ただの押し付けにすぎない。弱者が強者を縛り付ける論理だ」
「誰だって死にたくないからです。死にたくないから『殺しちゃ駄目』『壊しちゃ駄目』ってルールを作って、皆で守ろうとするんです」
「死にたくないなら強くなればいい。どうして弱い奴が強い奴を脅して、寄ってたかって捕まえて、罰を強制する?」
「弱肉強食を続けていたら、行き着く先は地獄です。自分が虐げていた相手が明日、強くなって自分を殺すかもしれない。そんな世の中がいいんですか?」
「殺されたんならそいつが弱かっただけだ」
「黒い霧の人に頼りっきりの人が何を言って……っ!?」
ぎち、と、繋がれた手が軋む。
腕一本くらいなら持っていかれてもいい。
でも、荒事はまずい。
「………」
「誇りはどうだ。ヒーロー殺しと俺と何が違う」
「わからないものは怖いじゃないですか。一貫して筋が通っている犯罪者は、許せないけど理解はできるんですよ」
原作のデクくんが「理解」と「納得」という言葉で説明したのと同じこと。
「……それが『本物』と『偽物』って訳か」
「……どうでしょう。ヒーロー殺しの勝手な理想かもしれません。私にしてみれば、あなたもステインも犯罪者です。理解できない犯罪者と、理解できる犯罪者」
「口の減らないガキだ」
「私、高校生です」
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