止まった時間は次第に速くなり (サリア・サイレンス)
.
「まだ起きてるのかサイレンス、体に悪いぞ」
-いつまでも親友だと思っていた。
「なぁサイレンス...勉強...な、なんでもないぞ!?」
-いつまでも守れると思っていた。
「っ!? ...すまないサイレンス。本当にすまない...」
-分かってる、これはただの八つ当たりだ。
「なぁなんでサリアと喧嘩してるんだ...? 二人が喧嘩してるのは嫌だぞ...」
-分かってる、これはただの我侭だ。
「イフリータ、私はサイレンスと仲直りする。絶対にだ」
「ほんとか!?」
「ああ! なんなら指きりしようか?」
「絶対だかんな!」
-一歩だけど確かに二人は進んだ。
「ゆっくり歩くような早さでいいんだ。焦ることはない」
-...私の歩みは、止まったままだ。
ロドスの研究室の一つに、サイレンスとフィリオプシスの二人が端末の前に向かい合っていた。カタカタと端末を操作する音が部屋の中に響くが、その音の発生源は一つだけであった。
音が止まっているのはサイレンスであり、その間にもフィリオプシスは自身の仕事を片付けていく。
「...」
光を放つ端末、その中身は此度の医療実験の経過報告であり、ここロドスでは重要な案件の一つであった。しかしサイレンスの手は動かず、その目もどこか遠いところを見ているようで端末からの光を反射しているだけであった。
十分かそこらが経って、ようやくサイレンスが再起動し端末を操作する音が増えた。サイレンスの様子に、フィリオプシスは業を煮やしたのか彼女の元へと向かった。
「サイレンスさん」
「...フィリオプシス? どうしたの?」
「提案。今日の業務を終了することをオススメします」
「いきなり何言ってるの...」
端末越しに向かいあうが、唐突なフィリオプシスの提案にサイレンスは肩をすくめた。対するフィリオプシスはいつもの無表情だが、どこかサイレンスを気遣うような雰囲気を出していた。
「五回。本日、業務に手が付かず止まった回数です」
「うぐっ...」
痛いところを突かれた、というより図星であった。サイレンス自身も昨日のこと、サリアとイフリータの指きりのことが頭の中でループして続けていることを自覚していた。
自分はどうすればいいのだろうか、そればかりを考えるが答えは出ない。そして今もまた考え始めてしまい、頭が垂れてしまう。
「サイレンスさん、貴女は休むべきです」
フィリオプシスの変わらない表情、だがその目には憂慮の念が込められていることがありありと分かってしまう。
「...分かったわ」
余り見ないフィリオプシスの姿に、サイレンスは折れると同時に感謝した。今は兎に角一人の時間が欲しかったから。
「業務は此方で処理しておきます。ごゆっくりしてください」
「...ありがとね」
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