ハーメルン
徒然なる方舟のままに
止まった時間は次第に速くなり (サリア・サイレンス)

「サイレンス、もういいだろう? サリアを責めるのも、自分を責めるのも」

「ッ!」

 Dr.に指摘されビクリとサイレンスの方が跳ね上がる。二人の様子を伺っていたサリアは、困惑しながら待ったをかけた。

「待ってくれドクター。サイレンスが私を責めるのは分かる、だが自分を責めてるというのは一体...」

「実はな、昨日のサリアとイフリータの話し合いを聞かせてたんだ」

「なっ! ...そうか」

「その時に「ドクター、大丈夫」...サイレンス」

「私の口から、言うから」

 サイレンスがDr.を止めると、サリアの前へと進み出た。サイレンスの目には覚悟が決まった光が灯っていた。
 久方ぶりにサイレンスと面と向かい合うことに気後れしたのか、サリアは半歩後ずさってしまう。だが、その際にサイレンスの悲しそうに歪んだ顔が目に入ってしまう。そして、昨日のイフリータとの約束のこともあり、半歩どころか一歩踏み出した。

「サリア」

 サリアの名前を呼び、息を吸いたっぷりと時間を取ってから口を開いた。


「ごめんなさい!」


 サイレンスはガバリと頭を下げた。サリアはサイレンスの謝罪に目を見開いた。

「貴女がッ、私達を見捨てるはずがないって、分かってたのに...。それなのに私ッ!」

「いい、いいんだサイレンス! 私は二人を見捨てたも同然なんだから!」

 涙を流しながらのサイレンスの心からの情動に、サリアはサイレンスの肩を掴む。肩を掴まれたサイレンスが顔を上げると、そこには涙目のサリアの顔があった。

「もう少し私が上手く立ち回って、いやサイレンスに相談してからにしておけば...」

「違う! 私がサリアの話をちゃんと聞こうとしてればッ!」

 二人は互いに思いの丈をぶつけ合いながら自身の非を言い合い、否定し合う。感極まってきたのか、目からは涙が流れ始める。
 サイレンスとサリアの様子に、Dr.は静かに部屋から抜け出した。二人の様子にあとはこのまま語り明かして貰うだけだと、そう感じたからだ。

「...ふぅ、イフリータに伝えないとな」

 部屋から離れていくDr.の顔には、笑みが浮かんでいた。



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