かまうぞ (テキサス)
「はて、なんのことですかねぇ」
「貴様ぁ...!」
テキサスはとぼけるトラヴィスに恨めがましく睨みつけた。トラヴィスは普段見れないテキサスの姿に、もう少し見ていたい気持ちに駆られるが今後、レッドとテキサスの関係が拗れる可能性があるためレッドに声をかけることにした。
「レッドさん、テキサスさんの尻尾のさわり心地はどうですか?」
「モフモフ、なのにすべすべ、ずっと触っていたい」
「気に入ったのですね。ただテキサスさんもお疲れですし、それ以上触り続けると嫌われちゃいますよ」
「それはやだ!」
「私ので我慢してください」
「分かった」
レッドはテキサスから離れるとトラヴィスの隣へと座り、トラヴィスの尻尾をモフり始めた。
解放されたテキサスは、ゾワゾワと背筋に感じていたものがなくなりようやく人心地つきほっと安堵のため息をついた。それでもまだレッドが近くにいるため、首筋に嫌なものを感じてはいたが。
「はぁ...」
「お疲れ様です。一杯飲みます?」
「止めておこう、絶対悪酔いする」
「それは残念」
まったく残念そうではないトラヴィスに、今度は疲れたようなため息を吐いたテキサス。
することもなくなり、帰宅しようと踵を返すがあることを思い出して足を止めた。
「そうだトラヴィス」
「なんでしょう?」
「いい加減コードネームぐらい考えておけ。ロドスでもまだ申請していないのだろう?」
「ですね。...コードネームですか」
杯を月にかざしながらジッと考え込む。
「『アーカンソー』」
「アーカンソー?」
「ええ、特に意味はありませんが」
「そうか、分かった。ペンギン急便の通達はやっておく、ロドスからはお前から言っておけ」
「了解しました」
じゃあな、というとテキサスは自宅へと帰っていった。
トラヴィス改めアーカンソーはテキサスを見送ると、残っていた安酒を飲み干す。空になった杯を置き、片手で隣にいるレッドを撫でまわす。
顔を上げるとそこには綺麗な満月が浮かんでおり、フードとガスマスクを外しているアーカンソーの顔を照らし出す。
男にも女にも見えるアーカンソーの顔には、表情が何も浮かんでいなかった。
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