ハーメルン
不良隊長と人造少女達の成長戦記
第三話『拾い物と無くし物』

 小隊の潜む青々と咽る亜熱帯の森林の地にて、夜の闇は過ぎ去り陽は既に高く上がっていた。
 木漏れ日の中を進む隊員達の足取りは軽快だ。夕暮れから夜半まで歩き続けて距離を稼ぎ、睡眠時間をあまり必要としない人造少女達に哨戒を任せて日の出までの間に僅かな仮眠を取っていた。青年隊長は四時間ほど、各隊員は交替で一時間ほど睡眠をとったので体力には余裕がある。 

「あはっ、水の音がする! 隊長、川の流れが聞こえるっ! あはははっ!」
「おー、やっと川に付いたのか。よしよし、でかしたぞ笑い上戸」

 そんな快調な足取りのおかげか、一行は第一の目標だった川にまで進行していた。早速と耳の良い短い赤毛にイヤーマフを装着した索敵少女が水音を聞きつけて、ニコニコしながら青年隊長にそのことを告げている。その表情には何かを我慢する様な様子も無く、本当に喜んで笑みを浮かべている様に見えた。たった一日でずいぶんと懐いた物である。

「何がやっとよ。誰かさんのペースに合わせてたから、こんなに時間を食う事になったんじゃない」
「スタミナお化けのお前らと一緒にすんなよ。繊細な俺はたまに休まないと寝込んじまうんだ」

 そんな緩い空気に浸っていれば、諌める様にきつい口調が投げかけられた。その声の主は、銀髪をツーサイドアップにした斥候を得意とする少女。本日もぴりぴりとした空気を放ち、隊の先頭から青年隊長にわざわざ振り向いてまで文句を言う。これはもうツンデレでは無くツンギレだ。
 そんな調子だが決して足並みは遅れさせず、己の役割はきちんとこなしているのだから器用な物である。

 怒りながらずんずんと進んで行く斥候少女の背中について行けば、半時間ほどで濃密な熱帯雨林を抜けて視界がさっと開けた。じっとりとした肌に張り付く様な湿気が風に流されて、目の前には砂利交じりの土と幅の広い流れの緩やかな河川が見えて来る。
 漸くと、青年達の小隊は目的地への初めの一歩に辿り着いたのだ。

「はー……、後は川沿いに上流に向かって行けば工業施設からの排水処理の痕跡が見つかるはずだ。それを足掛かりにして、目的の兵器製造プラントを見つける。ってのはいいんだが、こうも見通しが良いと監視は楽だろうな」
「そうですね、ある程度は密林を隠れ蓑にして進んだ方が良いでしょう。勿論、今まで以上にトラップには警戒しなければならないでしょうけれど」

 工場施設は排水の関係で川に隣接して作られる事が多い。そこを下流からたどって行こうと言う方針だったが、敵側も当然その程度は想定の内だろう。だからこそ、青年隊長と無表情な副隊長の視線が同時に、怒りんぼうな斥候少女に向くと言う物だ。

「何よ。そんな目で見なくても、私は私の仕事をこなすだけなんだから。無駄に心配するぐらいなら、せいぜい背後を取られない様に警戒でもしてなさいよね」
「お前は相変わらずプライド高いな。でも、俺らの生命線は実質的にお前と笑い上戸だ。頼りにしてるから頼むぞ、お姫様」
「お姫様って言わないで。言ったでしょ、仕事はこなして見せるわ。アンタはせいぜい、私の後ろで震えていなさい」

 高飛車な態度は自信の表れか、斥候少女は腰の鞘にマチェーテを納めつつ胸を張って言い放つ。それを見せ付けられる青年隊長は、頼もしいやら呆れるやらで苦笑いが浮かぶばかりだ。

 何はともあれ、やる気があるのは良い事である。部下の士気が高いうちに進めるだけ進むべきだろう。そう判断した青年隊長の指示で一行は再び森の中に戻り、川を左手に見ながら上流を目指して進んで行く。

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