ハーメルン
不良隊長と人造少女達の成長戦記
第四話『つかの間の戯れ』

 トンネルを抜けた先は雪国――などでは無く、まだまだ熱帯性の植物生い茂る密林地帯であった。それでも今までの相違としては、密林の木々を切り開いた道が方々に伸びている事だろうか。トンネルの出入り口を含めて十字路に、東西南北と大雑把な剥き出しの地面の道を幅広く刻み付けていた。
 今は埋まってしまった舗装されたトンネルと言い、この辺りには敵陣の開発の手が伸びていたようである。

「さて、大分川から離れて迷走しちまったからな。何とかしてもう一度河川近くまで行って、今度こそ上流を目指したい所だ」
「そうなると、こう方々に伸びている道は邪魔ですね。あの道をノコノコ歩いていたら、十キロ先からでも丸見えです」

 小隊は現在小休止の為に、密林の中の比較的開けた場所で固まって座り込んでいた。周囲の警戒は銀髪の斥候少女が買って出ており、緋色の髪の索敵少女も休んでは居てもその耳があれば即座に接敵に対応できるだろう。
 なので、残りのメンバーは地図を囲む様にして向かい合いつつ、もぐもぐと味気ないジャーキーでの食事を楽しんでいる。

「正確な位置は分からんが、山裾に沿って移動すればまた川の近くに戻れるだろう」
「この車道と川の近くに目的の兵器工場がある可能性が高いのは分かりますが、一気に予想地点まで直進してしまった方が確実なのではないですか?」
「密林を突っ切って行く方が確かに早いだろうが、さっきも言った様に正確な位置が分からんのだ。自分達はまっすぐ進んでいるつもりでも、逸れて変な所に行く可能性だってあるんだぜ」

 もっちゃもっちゃと口を動かしながら、隊長と副隊長による作戦会議の様な物が執り行われている。あーでもないこーでもないとやり取りを交わして、今後の行動指針を少しずつ形にしているのだ。
 そんな二人を眺めつつ、索敵少女と黒髪短髪の無口な運搬少女が二人そろってモグモグと乾燥肉を咀嚼していた。まるで小動物の姉妹の様である。

 そして少し離れた所では、短機関銃を両手で保持しつつ周囲を警戒している斥候少女が佇んでいた。その顔色は普段よろしく不機嫌そのものと言った様相だが、どことなく気落ちして覇気が無いように見える。頭の左右で括られたツーサイドアップの銀髪も、心なしかしなっとヘタレている様だ。

「…………。まだ引き摺ってるな、あれ……」
「メンタルに欠陥がある個体のようですね。通常であれば再調整されるはずですが、今まで発覚しなかったのであれば今回初めて露見したのかも知れません。まあ、今回の作戦が終わるまで生き残れたら、再調整されて正常に戻せるはずですよ」

 精神的外傷を再調整して直す等と言う事を、表情が変わらない副隊長が発言するとなかなかに怖気を誘う。なによりも、青年隊長は気遣って小声で話していたと言うのに、副隊長の方は遠慮の欠片も無く普通の声色で話したのだ。当然、離れた位置にいる斥候少女にもその言葉は届いた事だろう。
 実際、副隊長の言葉が聞こえたらしく斥候少女はチラリと一団の方に視線を向けた。しかし、気まずそうにしている青年隊長と目が合うと、すぐにその視線をふいっと反らしてしまう。別に聞こえて居ませんよと、逆に向こうに気を使わせてしまった様だ。彼女はまた、通る者も居ない剥き出しの道路の方を睨みつけた。

「あーあ……。少しは配慮ってもんを考えなさいよ、副隊長なんだからさぁ」
「私達にその様な物は必要ありません。そもそも、こんな食事ですら必要とはしていないのですから」

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