ハーメルン
気がついたらウルトラマンティガになれるようになっていました。
空に駆ける(2)
GUTS作戦司令室が置かれているのは、千葉県房総半島にあるTPC日本支部。
航空自衛隊の峰岡山分屯基地と隣接する支部であり、TPC日本支部直轄であるGUTSの航空基地としても機能する場所で、新城は1人屋上で風に当たりながら遠くに見える景色を眺めていた。
「どうしたんですか?」
そんな新城に追いかけてきた伶那が話しかけた。伶那と新城は一つ違いの後輩と先輩であり、武器に強い新城と、戦闘機パイロットとして高い成績を残す伶那は、同期の中でも目立って活躍していたのだ。
後輩であり、ライバルでもあった伶那に、新城は不機嫌そうに顔をしかめながら一瞥する。
「いつもの新城さんらしくないですよ?」
「うるせーな。だいたい、いつもの俺ってなんだよ」
そうですねぇ、と伶那は目元を両手の人差し指でキッと吊り上げて新城を見た。
「こんな顔で、頑固で負けず嫌いで責任感が強くて、誰よりも戦闘機と武器が好きなミリタリーオタク?」
「あのな、喧嘩売ってるのか?」
不機嫌そうな顔から呆れたような表情に変わった新城を見て、伶那は面白そうに笑うと新城も釣られて伶那と同じように笑みを浮かべた。
「それくらいが、いつもの新城さんらしいですよ」
新城がここ最近、変に肩肘を張っているのは誰から見ても明らかだった。伶那のほうが若いが、新城の姿を見つめていた彼女にとって、彼の異変に気付くなど時間は掛からなかった。
「すまないな、柳瀬。どうにも最近、カッカしすぎてる」
「——ティガのことですか?」
「いや、全部さ」
そう言って新城は手をかけていた手すりから手を離して柵へ背を向けて体重を預けた。
周りは巨大生物のことを「怪獣」だなんて当たり前のように受け入れ始めていて。
新城自身、まだそんな存在を信じられないといつのに。
「…なんか、俺だけ置いてけぼりにされてるような気がしてな」
そう溢す新城に、伶那は首を傾げる。
彼がオカルトチックなことや、そういう迷信めいたことを信じていないことは知っていたが、それでも頑なな新城を見るのを伶那は初めてでもあったからだ。
「新城さんは、なんで怪獣を信じないんですか?」
その言葉に、新城はわずかに顔を硬らせてから柵に腕をかけて上を見上げる。空はどこまでも突き抜けるような晴天だった。
「——俺の父親は航空事故で死んだんだ」
そう言って、新城は胸ポケットに入れていた父のパイロットワッペンを取り出した。
同じ航空自衛隊のパイロットであった父は、パトロール任務中の1万5000メートルの高度で消息を経った。後に行われた調査や捜索の後、太平洋千葉県沖合で、戦闘機の残骸が発見された。
父の遺体がない中で行われた葬儀のことを、新城は今でも覚えている。
「葬儀の時に、僚機だった親父の同僚が言ったのさ。「空で怪獣に襲われた」って。その同僚は精神病を患ってると診断され空から降りたが…それを信じた俺は皆の笑い者だった」
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