メニュー2 魚の干物定食
メニュー2 魚の干物定食
無惨が定めた朝食は全員でと言うのは全員といいつつもある程度のメンバーの変化はある。そもそも鬼にとっての朝食とは日の落ちた頃合で、昼食は深夜、そして夕食は夜明けとまぁ、全部逆な訳だ。俺も勿論昼夜逆転の生活をもう何年も続けている、しかしそれでも朝食に全員が揃わない事は多々ある。それは俺のスキルである「人化の術」に理由がある。医者の鬼によって家族を殺された、復讐したいと言う者を無惨は鬼に変えたが、それでも戦力として数えられない者もいる。そう言う鬼には俺が人化の術を掛けて、行方不明者などが多い街での情報収集や斥候として潜んで貰っている。つまりそう言う関係性で食事の時間がずれる事が多々あるのだ。
「……カワサキ……魚の干物定食……1つ」
カウンター席に腰掛けた6つ目の異形の侍「黒死牟」が若干聞き取りにくい口調で朝食のオーダーをしてくる。
「珍しいな、お前が時間をずらしてくるなんて」
「……医者の鬼を……討伐していた……から……な」
「人化の術で偵察してたんじゃなかったのか?」
黒死牟の希望で人化の術を掛けて外に送り出したが、本来は戦闘班のリーダーの黒死牟に人化を掛ける事は無い。だが鬼気迫る表情に人化を掛けたのだ、一応名目は偵察だった筈だ。
「……医者の鬼……を見つけた」
「うん、それは判るけど、日の中で人化解いて無いだろうな?」
「……少し……焦げた」
「それで遅れたのか」
「……うむ」
うむじゃねえよ、この馬鹿野郎……俺は頭痛を覚えずにはいられなかった。人化の術は鬼を人間にする、それは本来の鬼の弱点である日の光を克服出来ると言う事だ。正し、その反面鬼としての戦闘力や検知能力を全て失う、勿論血鬼術だって使えなくなる。
「あんまり無茶するなよ」
「……判った」
「それで魚の干物は鯵と鯖のどっちがいい?」
「……鯵」
魚の干物が何が良いかと聞いて俺は魚の干物定食の準備を始める。とは言っても味噌汁は既に作ってあるし、漬物と、大根とこんにゃく、そしてにんじんの煮物も出来ている。今からやる事と言えば鯵の開きを焼いて、大根おろしを準備するくらいだ。
「……いつも……定食の……準備をしている……な」
「すぐ出せるからな。お前達は嫌いだけど、ライスカレーも良いぞ?」
「……御免こうむる」
「はいはいっと、無理には勧めないぜ」
炭火で鯵の開きの身の部分から焼き始める。鯵の皮が立ってくるまでは焦げないように見ているだけなので、味噌汁に火を入れて温かくしながらネギを小口切りにし、大根おろしも準備する。
「……お前と無惨様に会った時も……魚だった」
「あの時は拠点が無かったからなあ。川で魚を獲って焼く位だったな、どこかで召抱えられるかと継国の城に行った頃合だったな」
平安時代から戦国時代に移り変わり、戦国時代が終わる手前くらいで鳴女がメンバーに加入して、それから江戸時代の初めくらいで無限城が出来たからな、それまでは殆どその日暮らしのサバイバル生活だった。無惨が駄々をこね始めたので料理番を募集していると言う継国の城に行ってからの付き合いだから、黒死牟との付き合いは無惨に次いで長い。
「塩焼きくらいで驚かれて、俺としてはどうすればいいかと思った物だ」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク