ハーメルン
正体不明の妖怪(になった男)、情緒不安定な百獣の腹心になる
北の海から
吐く息は白く、空からは雪がはらはらと舞い落ちる。
それらの雪は綺麗だが、やがて降り積もり、過ぎれば人の生活の邪魔となる。
「はぁ……寒い」
だがこれもここ最近の日常である。
何故ならここは“
偉大なる航路
(
グランドライン
)
”と“
赤い土の大陸
(
レッドライン
)
”によって分けられた4つの海の1つ──“
北の海
(
ノースブルー
)
”。
季節は冬。当然、寒帯に位置する北の海でも特に寒い時期である。
こういう時は室内に籠もってお酒で身体を温めるのが1番良い。特に北の海の酒は身体を内側から温めてくれる……早い話がウォッカである。
海賊といえばラムなんだけども、やはり手に入るお酒はウォッカが多い。なのでここ最近のトレンドはそれだった。
「おい見習い!! 酒ェ持ってこォい!!」
「あ、はーい」
船員の1人からそう言われれば、死体を放置して一旦酒を渡しに行くしかない。あ、死体が凍るのは割と良いことだと思う。バラバラに割れば樽とかに詰めやすいし、処理しやすい。
……でも今ここで酒を飲もうとしなくてもいいのにな、とも思う。羨ましくもあるが、よく飲めるな、とも。
「うぎゃああああああ!?」
「きゃあ~~~~っ!?」
「だ、誰か……!! 助けて、くれェ……ゴフッ……」
「やめろォ!! 市民に手を出すな!! クソッタレェ!!」
周囲から連続する悲鳴の連鎖。続く下卑た笑い声。
「ハ~ハハハマママママ!! このお菓子、甘くて美味しいねぇ~~~♡ これをもっと、もっとあるだけ寄越しな!! 邪魔する奴は全員ぶっ殺すよ!!」
「おいリンリン!! 戦闘中に菓子ばっか食ってんじゃねェよ!! ったく、あの馬鹿が……!!」
「ジハハ、放置しとけよ白ひげ。ありゃお頭以外にゃ止められねェ。一々相手にすんのも面倒だ……それに確かに、この弱さじゃ退屈すぎて別のことしたくなる気持ちも分かるぜ」
「チッ……」
雪が降る町の大通りで、うちの最高幹部である3人も含め、多くの船員達が大暴れ。──あっ、民家が燃えた。温かい。火は助かる。正直、私ってちょっと薄着気味だから寒いし。
でもその手があったか、と私は納得し、直ぐに持ち場に戻って近くの相棒を呼んだ。
「おーい! カイドウ~! ちょっと手伝ってー!」
「ウォロロロロ!! なんだぬえ!! おれは今楽しんでるところだ!! 邪魔するな!!」
「いや、ちょっとそこらの建物に火つけたいのと……後、そこ危ないからどいた方が……あっ!? 後ろ!!」
「後ろ……?
ッ!!?
」
私の声に反応し、敵を殴り殺した後のカイドウが首を横に向けたところで──大砲が無防備なカイドウに直撃する。
態々私らの為に町の中に大砲持ってくるとか大掛かりだが、まあそれでも足りないくらいなのだからむしろ良い判断だと思う。って、注意したのに結局当たったし……! ああ、もう……!
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