ハーメルン
月の帰る海
07. Just You and I

 無言で布団から上体を起こし周囲を見渡す。カーテンのない窓から朝日が容赦なく差し込み、部屋を明るく染め上げている。明るくなって改めて見ると、この部屋も元は破壊されていた事がありありと分かる。それでも精一杯の手入れをしたのが窺える、俺ではない誰かを待つために整えられた部屋。

 「そうだった……俺は……」

 母艦に置き去りにされた俺は、共に帰還するはずだった涼月の世話になり、この元泊地で一夜を明かした。朝日の眩しさを避けるように位置を少しずらし布団の上で胡坐、腕を組み考えてみるが、何一ついいアイデアが浮かばない。


 八方塞がりだ。


 特務の内容を改めて思い出す。()()()()()()()()()()命令であって、()()()()()()()()()ものではないのだ。つまり涼月に対し何らかの強制力を働かせる根拠がなく、彼女が自分の意志で帰還を望んで初めて特務の前提が成り立つ。

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