ハーメルン
今を繋ぐ赤いお守り
第15話

この日、僕は何となく学校を欠席した。
母さんにも何故だか分からないけど食道辺りがムカムカとして気持ちが悪いから休むと言った。流石に母親に何となく休みたいだなんて言い出せなかった。

朝の10時くらいに母さんが家を出て行ったのをドアの閉まった音で確認した。
それをいいタイミングとして僕はまた、何となく、部屋を掃除し始めた。

自室の散らかり具合はその人の本性が垣間見えるような気がする。特に偉い学者のじいさんが行ったわけでは無くてただの僕の仮説。
ただキョロキョロと見渡す辺りはさほど散らかっているという訳では無いが、本棚や勉強机の後ろには配線類がごちゃごちゃとしている。

僕はそんな状況をただぼんやりと見続けていた。
目に見える部屋のレイアウトは良いけれど、裏側は色々なコードがごちゃついている。世の中の高校生みたいだ。

「別に、配線類は片付ける気にはならないんだよな」

この空間に一人しかいないと知っている僕は時折こんな独り言を零す時が多いような気がする。
僕の性格上は口を動かしている方が落ち着くような気がするけど、人前とか学校では僕から話しかけることはめったにない。

大体は声を掛けてくれた人と話す。
話始めれば結構面白い奴だったんだなって認識されるようになる。

そんな僕の事情なんて今はどうでもいいし、もし僕の心情を「何か」の手段で読み取っている人がいたとしたならば人前での僕の習性に興味を抱く人なんて誰一人ともいないはず。

みんなが気になっているのは、どうして僕が「何となく」部屋の掃除をしているか。
この一点のみなのだろうね。

「ここにも、無い……よね」

学習机の引き出しを一つずつすべて知らべても、面白い物や懐かしい思い出に浸れる品が出てくることは無かったから僕は盛大にため息をついてやった。

確か中学3年生の時に勉強に使うファイルやノートを入れるスペースを確保するために直感的に見て何も感情が湧かなかった物はすべて断捨離したっけ。
強く思い出に残っている物だったら捨てるわけないし、やはり僕の勝手な思い違いだと自分の中で勝手に結論づけた。

家にいても仕方がないから適当な私服に着替えて外へ繰り出すことにした。
自室から出て階段を降り、何故かいつもの癖でリビングに顔を出す。

「あ……作ってくれたんだ」

机の上には母さんが作ってくれたであろうチャーハンがラップをされて置いてあり、その上に紙でレンジで温めて食べてねと書いてあった。
もしや母さんには僕の仮病を見抜いているのかもしれないという気持ちと、そんな息子のために作ってくれた事に嬉しく感じながら、レンジの中に手作りチャーハンを入れた。


チン、と言う軽快な音が鳴ってすぐに皿をあたふたと持ち替えながらラップを明ける。
口の中に入れるとごま油の香ばしい香りと人の情が籠った温かい味がして、スプーンを止めることなく食べ続けた。


平日の昼間に歩き回ると警察とかが寄ってくるかもしれないけど、堂々としていたらバレないだろうし浪人生と言えば問題なんて何も無い。
ただ何も面白い事が無いから中古本が売ってあるお店で漫画の立ち読みか、誰が買ったんだよって突っ込みたくなるようなIQテストが掲載されている100円本を読もう。


[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析