ハーメルン
うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる
ゴキゲンの湯


あと天衣の奨励会試験で障害になりそうなのは、椚創多1級か。7月には初段になっているはずだから、受験時に椚は初段だろう。1級受験なら先手番が貰えるから勝てる可能性はそれなりってところかな。あれは天衣の、1つ年上だったか。

『1歳年上ですね。1級受験をすれば間違いなく、ぶつけられる存在だと思います』
(奨励会の二次試験は、受験者対奨励会員。奨励会員側は成績に加算される以上、全力で来るから難しいんだよな)
「よし、今日はここまでだな。
奨励会は香落ちの手合いが多いし、1級からのスタートなら上手側の勉強もしないとな」
「香落ちの上手って、飛車を振るのよね?
生石玉将に、少し教えて貰ったわ」
「隙あらば振り飛車を教えて来るのかあの人。でもまあ、良い機会だし今度の土日はゴキゲンの湯に行くぞ」

上手い具合にゴキゲンの湯へ行くよう誘導して、当日。天衣と大阪駅で待ち合わせをし、そのまま京橋に向かおうとしたところで、乗り込んだ電車に居た九頭竜&あいのペアとばったり会う。そんなことある?

「福島は反対方向ですよ竜王さん」
「俺達は京橋に予定があるんだ」
「そーです。あいたちはこれからゴキゲンの湯に行くんです」
「あら。目的地は同じじゃない。私達も、今からそこに行くんだけど」

向こう側は、俺達がゴキゲンの湯に向かうことにはあまり驚いてなかった。これは生石玉将から、話を聞いていたな?






九頭竜はあいを連れて、今日もゴキゲンの湯に向かう。その途中、大木と天衣にバッタリと会って一緒に向かうことになった。大木を見て、九頭竜がすぐに思い出すのはあいを連れてゴキゲンの湯に初めて行った時のこと。

「あいか。良い名前だが、珍しいな。つい先月、同じ名前の子が1週間、毎日ここに通ってたぞ」
「それって、夜叉神天衣のことですか!?大木の弟子の!」
「天ちゃんもここで修行をしていたんです!?」
「ああ。天衣の場合、対振り飛車のスパーリング相手を求めてここに来ていたがな。俺と合計で、100局以上指したんじゃないか?この俺があそこまで小さな女の子に、平手で何度もヒヤッとさせられたのは初めてだったぜ」

その時に九頭竜は、大木と天衣がこのゴキゲンの湯に通っていたことを知った。そして生石が天衣に角落ちで負けたことを知り、既に天衣は奨励会の有段者レベルであることを九頭竜は認識する。

「天衣はずっとネット将棋か師匠との指導対局だったからか、随分と楽しそうに道場の客とも指してた。
と、それと渡しても良いのがあったな。これ、大木がソフト相手に戦って勝った棋譜だ」
「え!?何故それを、生石さんが?」
「大木自身が、天衣の指導を頼むための対価として持って来た。大木がソフトを相手に後手番を持って、中飛車で勝った棋譜を100局分だな」
「そんなもの、貰って良いんですか?」
「コピーだし、半分ぐらいは戦型が気持ち悪すぎて使えないから安心しろ。それとその内、71局は世に出ていないソフト嵌め手を使っている。ソフトの価値観を逆に利用して、大木の良い様に操っていた。ま、参考になる構想や着想は多かったがな」

生石は九頭竜とあいとの話が纏まったあと、大木が持って来た手土産の内、3分の2を九頭竜に晒す。その大半が新たなソフト嵌め手だとしても、九頭竜にとっては喉から手が出るほど欲しかった大木の研究成果だった。

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