13話 幼馴染と渓谷探索。
「いやぁ……食った、食った!BBQってのもやっぱりいいもんだな〜」
「ほんとにね……ずっと集中してたから、助かったかも」
俺とサリーは現在、ボス部屋中央にて、ゆったりと寛いでいる。
具体的に言えば、俺がストレージから取り出した椅子やらクッションやらを使って、リラックスしていた。
ここは攻略済みダンジョンとして扱われる筈なので、訪れることができるプレイヤーはいないだろう。
よって襲撃の可能性が0であるため、超快適な休息可能空間と化していた。
……所々に存在する【毒竜】の毒だまりに触れさえしなければ、だが。
今は亡きここの住人も、この様子を見れば呆れるに違いない。
そんな俺に対して……
複雑な表情を浮かべながらも、ジト目を向けてくる少女が一人。
なんか、似た状況が前にも合ったような……なんて既視感を覚えながらも声をかけた。
「どしたよ、メイプル?……お腹でも壊したか?豚肉は焼いたぞ?」
わざと前例に倣って同じように聞くと、メイプルも、そのことに気がついたのか苦笑しながらも返事をする。
「……あっくんだけ、卵を貰えてなかったから、いいのかな?って」
メイプルが話しているのは、報酬として新たにゲットできたモンスターの卵、というアイテムのことである。
温めると孵化する、という情報の少なさだが、おそらくテイム可能なモンスターが生まれるのでは?と俺たちは予想していた。
緑色、紫色の二種類の卵が存在していて、俺が怪鳥のドロップ素材を多めに貰う代わりに、それらの卵はメイプルとサリーが得ることになっていたのだ。
因みに、獲得できたメダルは5枚。
メダルについて言えば、もしもの時に備えて、対プレイヤーならほぼ死なないであろうタンクの二人に半分ずつ確保して貰っている。
メイプルが不満そうな顔をしていたが、俺はお前らと違って普通に死ぬからね?
……まだ、死んでないけど。
正直、探索が楽しいので、報酬は彼女らの分の20枚が集まれば、俺は充分かな、なんて思っている。
それを口にすると『あっくんが取らないなら、私もスキル取らない』なんて、駄々をこねそうな奴がいるので、最後二日間ぐらいの夜は、単独行動でプレイヤーを狩ったことにしてメダルを集めたって嘘をついておこう。
「また、いつか取れるチャンスは有ると思うよ……その時は手伝って貰うってことで手を打ってくれ」
「……ん」
頷きながらもまだ何処か釈然としないような、顔をするメイプルを見てから、視線でサリーに助けを求める。
「ほら、メイプル。折角譲ってくれた卵なんだから、もっと嬉しそうな顔でいないと!アサギも、そっちの方がいいでしょ?」
ほんと、お前最高だわ。
メイプルの扱い方をよく心得ていらっしゃる。
『それも、そっか!』と言った様子で、笑顔になってくれた天使を見ながら、俺はいい仕事をしてくれたサリーと、拳を合わせたのだった。
この時、俺は思ってもいなかった。
今、交わした約束と胸に秘めた計画。
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