15
バスの前部分で、軽くプロデューサー達と話し合っているパスパレの方々を横目に私はバスに揺られていた。1番後ろの窓際の席に座り頬杖を付き、一個開けた先に黒服さんが姿勢を正して座っていた。揺られながらも黒服さんはサングラスをクイッと上にあげる。
「美咲様、会話に参加なさらないのですか」
「元々参加する予定のなかった人が参加する必要はないと思いますし、プロデューサーの方々には"分からないことあれば聞いてくれ"としか言われなかったし、なにより、二ヶ月間だけ撮影に参加する人物と関係持とうとは思いませんよ、どうせ」
そう言って窓の外の風景を見る。バスの外は都会と言うよりかは少し都会から離れた住宅地っぽい風景になりつつあった。そうとは思いませんが……っと言う黒服さんの声を聞き、目線を黒服さんの方にやる。
「そもそもの話、本当によくこの話が通りましたね」
「はい、弦巻家の名前出したら撮ってくれるのを許してくださいました」
しれっと黒服さんが言う。……なんか、社会の闇見たかも……まぁ、そんな物なんですかね……世の中……まぁいいか。
「それにしても、こんな重りを背負ってミッシェルに入れって言うのか……」
今朝追加されは分は思いの外重く私にのしかかっていた。これを着てミッシェルの中に入るとなると、ミッシェルの重さが+αからと言うとても耐えれる気がしない。するとその言葉に対して黒服さんが首を横に振る。
「いえ、ミッシェルになっている時はその重りは外して下さい、私共もそこまで鬼ではございません」
「あ、そうなの」
一言だけ返すと、はいと返される。そして私達、二人の間に会話がなくなると前の方から話が纏まったのか、日菜先輩がよっよっよっと器用に(本来はダメですが)バスの中央を歩いて来る。そして、私の一個手前の席に着席する。
「美咲ちゃんはプロデューサーさん達と話さないの」
席越しに声をかけて来るが、私は首を横に振る。
「私はいいです、二ヶ月しか参加しませんしね」
「そっかー残念……」
そう言って残念がったあと、日菜先輩は少しんーと思案する。
「……それで美咲ちゃん、本当にやるの」
声のトーンを少し落として忠告するように日菜先輩が聞いてくる。私からだと顔は見えないが目を細めていると確信を持てた。多分今の日菜先輩には嘘は通じないと思う。
「……正直に言うと、私はやりたくないです、前もそうやって逃げて来てましたし……今回こんな強引にさせられて私にとってはただの迷惑です……」
「…………本当にそう思ってるの」
完全にトーンを落とした日菜先輩がまるで獲物を追い込むチーターの様に私を言い攻めてくる。
「私には今の美咲ちゃんはるん♪って来てないの、なんか、やらされる事に対して美咲ちゃんがるん♪って来てないの、感覚的な話しかできないんだけど、私にはわかる、今の美咲ちゃんはるん♪っともキラキラっとも来てない、こころんといる時と違ってるん♪ってなってない」
バスが信号で止まり後ろを向いた日菜先輩の目が私の目を捉える。いつもキラキラと光っている筈の日菜先輩の目はまるで何かの獲物を狙う鷹のように細く、それは日菜先輩の双子の姉である紗夜先輩に見透かされているかのように、私の目をはさなかった。
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