ハーメルン
嘘つきの道化師 
20

その後何も問題なく取材は進み、一通り終わった後、私は行きのバスと同じ席に座り、夕焼けのオレンジ色の光に当たりながら揺られていた。ただ数点違うとしたら、目の前の席に最初から日菜先輩が座っていたと言うのと黒服さんが反対側の窓側の席に座っているって事かな。

「それにしても今日は災難だったねー」

「いや、けしかけたの日菜先輩でしょ」

そんなやり取りをしながら日菜先輩はあははって笑った。結局ミッシェルは最初の方にしか出てきて無いし、後の方なんて疲労困憊になったスマートミッシェルの方がパスパレの人達の後を追ったり、一緒に船に乗ったらするだけで特に表立つ事はなかった。それで良かったのか私自身自信はなかった。だけど、その事をプロデューサーの方に聞いたところ"問題ないそれどころか撮り高があったから大丈夫だ"と返された。本当にあったのかなぁっと不安に思っているとバスが信号で止まる。

「にしても、今の美咲ちゃんは凄いるん♪としてる!」

そこで目をキラキラと輝かせた日菜先輩がこちらを向いて言ってくる。行きのバスで見た鷹のような目はしておらずひとまず安心した。そして、それに対してそうですかねと返すと日菜先輩は首を縦に振る。

「そうそう!こう、るん♪って雰囲気が凄い伝わってくるよ!」

そう言って腕を振る日菜先輩に対して私は苦笑いするしかなかった。でも、まぁ、確かに何かが変わったっと言うのは私自身心の中で思っていた。あの、金髪の後ろ姿を眺めるんじゃなくて、少しでもあの後ろ姿の横に並びたい、今はそう思うようになっている。

「でも、強ち日菜先輩の言ってる事は間違いないと思います」

でしょでしょ!っとキラキラに輝いていた目が尚更キラキラに輝く。それはまるでこころの笑顔を見ているようで思わずふふっと吹き出してしまう。

「どーしたの、みさきちゃん、急に笑って」

「いや、その、日菜先輩を見ているとこころを思い出しちゃいまして」

えーなにそれ!っと日菜先輩が聞いてくると共に、青信号になったのかプシューと言う音が鳴りバスが動き始める。それと同時に日菜先輩はまた前を向く。

「私がけしかけたとは言え、それでも本当に自分自身の手で救っちゃうとはね……あの時凄い格好良かったよ、美咲ちゃん」

前を向いて顔が見えない状態で、日菜先輩が落ち着いた声でそう言ってくる。いつもより落ち着いている声はどこか紗夜先輩に似ていた。

「……いろいろとありがとうございます、日菜先輩」

私のこの思いに気付けさせてくれた日菜先輩にお礼を言い私は、その思いを噛み締めつつバスに揺られて帰宅するのであった。

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