ハーメルン
嘘つきの道化師 
5

市ヶ谷さんと前夜祭について軽く話した日の放課後、その日はハピハロの会議も特になかったから私はこころと一緒に帰宅していた。そしてその途中で黒服さんに拉致られた。もちろん、こころ邸の黒服さんなので、身体改造されてヒーローになったとか、ゾンビに改造されたとか、変な薬を飲まされて子供になった(あ、でも鶴巻グループの事だしこう言うの普通に作れそう)とか、そう言う話ではなく単純に件の前夜祭についての話をするためだった。

「美咲様に一つご報告がありまして強引な手を使わせていただきました」

「それで、何用ですか」

こころと、弦巻邸内で別れた後別室で黒服さんの一人と机越しに対面する。対面していた黒服さんは重々しく口を開く。

「件の前夜祭に弦巻家がスポンサー入りするのが決定しました」

「はい、それでなんですか」

こころがやるって決めた以上、大手企業らしい弦巻グループが関与するのはわかる。確かに凄い事だけど……だけど、それで?って感じが凄いする。

「そこである程度なら、前夜祭中に私達が美咲様のサポートする事ができるようになりました」

「はい……いや、だから?」

素っ気なく返すと、黒服さんが立ち上がりこちらに前のめりになる。

「そこは嬉しがる場所でしょう!事情を知ってる人達が周りにいるだけでもだいぶ変わりますって!」

「いや、それでも根本的な解決になってないでしょうが!」

実はこんな感じのやり取りは実は二回目で、一回目はこころと弦巻邸へ向かっていた時の車内にて行われていてーーー

『こころ様、弦巻グループが今回の前夜祭のスポンサーになりました』

『凄いじゃない!』

『あはは、それはよかったね』

この時はまだ私もへぇ〜ってなってた。凄いぞ、弦巻グループってね。

『ふぅ……これで少しでも楽になればいいんだけどなぁ』

思わずそう呟いた矢先、隣にいた違う黒服さんが耳打ちをしてきて……

『すみませんが美咲様には一日中ミッシェルで出てもらう事には変わりません』

ーーーその時の私は"僕は今、冷静さに欠けています(真顔)"状態に陥ってました。まぁどちらにせよ、弦巻グループが関与する事になっても、私が前夜祭に一日中ミッシェルとして駆り出されるのは変わらないと言う時点で私にとってはどうでもいい話になる。

「私達にはそこまで関与する事はできないんですよ!」

「じゃ、一々私を拉致する様な形で弦巻邸に連れて来ないでくださいよ!車内で感じた尊敬を返して!」

私も机を両手で叩きながらも立ち上がり対抗するようにして、前のめりになる。

「美咲様には迷惑をかけたと思ってるが故のこちらの配慮なんです!」

「配慮はありがたいけど!それをするなら次のハピハロ会議で伝えてください!」

「ですがっ……」

それでも食い下がろうとする黒服さんを他の黒服さん肩を叩き、目の前にいる黒服さんが座る。それに釣られて座ると、肩を叩いた方の黒服さんが口を開ける。

「お言葉ですが、美咲様、私共は弦巻グループの令嬢であるこころ様の意思が"前夜祭一日中、ミッシェル様を舞台の上に立たせてあげたい"のであれば、私共はその意思を全力でサポートすると言うのを1番に置いてやっております。そこで、キーパーソンになる美咲様にはいち早く情報を知ってもらって予め動けるようにして欲しいが故の配慮なんです。」

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