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パステルパレットの皆さんと会合した翌日の朝、私はいつもより早く目が覚めた。ベッドの上で上半身を起こした私は少しポケッとした後、地面に降りる。
「ふぁぁぁぁ」
大きな欠伸をした後に、パジャマを脱ぐ。それから、ベッド脇にあるタンスの中から半袖とジャージを取り出す。最初に半袖を着て、今度はベットに掛け立てていた胴体の重りを着る。
「よいっしょっと」
一応10キロあるらしいけど、なんかそこまで重くない気がした。いや、重いんだけど……なんか、そのミッシェルを着ている時に比べると軽いって感じがしたのである。
「…………」
ふと、そこで、昨日、パスパレの事務所にてあった事を思い出し少し思案にふける。パスパレが出ている番組に出演する件、パスパレの曲とリミックスさせると言う案件……どちらにせよ、私にとっては簡単にこなせるような品物ではないと思ってしまう。
「本当になる様になるのかな……」
昨日、日菜先輩にそう言ったけど、私自身その確証は持てないし、何より不安しかない。そう思いつつ、足首の重りと手首の重りを装着する。
「昔の私じゃあり得ないなぁ……」
ミッシェルの中だとは言え、勝手にテレビに出演したり、大きなイベントにバンドメンバーとして参加しなくてはいけないと言うことを、やっぱ家族に相談すべきなのかな……っと昔の自分はそう考えてたと思う。けど、今の私は1ミリたりともそう言う考えに至らなかった。
「強ち、日菜先輩の言ってる事は間違ってなかったの……かな……」
ジャージを着て、髪の毛を軽くピンで止める。それから、ベッドの上に置いてある携帯を取りポケットの中にしまう。
「どちらにせよ、もう動き始めてしまったものは止まらないんだよね……」
黒服さんが白鷺先輩に向かって言ったあの言葉、でも、なんだか、あの言葉には引っ掛かりを覚える。黒服さんの過去もそうだけど。部屋のドアを開け、廊下に出る。それから階段を降りて一階に行き、洗面台からタオルを回収する。
『美咲ーまた、走りに行ってくるの?』
台所からお母さんの声が聞こえてくる。
「うん、そのつもり」
『じゃ朝ご飯が出来るまでには帰って来なさいよ』
そう返事をして、玄関に来る。いつも履いているローファーの隣に置いてあるスポーツシューズを引きずり出す。そこに足を入れ、踏み込んでしまった踵を元に戻し、頰を2回両手で叩く。
「よし、行きますか」
玄関の扉を開けて、また、私ー奥沢美咲の1日は始まるのだった。
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