ハーメルン
REGAIN COLORS
邂逅


「……まさか人型の近界民(ネイバー)か?」
「いや、生身みたいだし違うと思うぜ。トリガーも身に着けてねえし」
「つまり警戒区域に立ち入った一般人だと?」
「一番可能性が高いのは、な」

 人の見た目をした敵も存在する。だが目の前の意識を失っている相手が武器を所持していないという事は米屋がすでに確認していた。
 ならば部外者が偶々この警戒区域に立ち入り、何らかの事件に巻き込まれて意識を失っているだけ。そう考えるのが妥当だろうと三輪達は結論を出す。

「とりあえず保護して本部に連れてくって事でいいか?」
「……そうだな。もしもこいつが近界民(ネイバー)を見ていたならば話を聞く必要がある。記憶の処理も含めてな」
「了解」
「本部。こちら三輪隊。これより事件に巻き込まれたと思われる一般人を搬送します」

 三輪はボーダー本部に一つ報告を入れて通信を切った。
 ボーダーは記憶を消去する技術を持っている。秘密保持のため、近界民(ネイバー)の騒動に巻き込まれた一般人やボーダーを脱退する隊員の記憶を封印する措置を施す事になっているのだ。
 もしもこの相手が本当に無関係の者だとしても、敵を見ているのならば話を聞き、そして記憶を封印しなければならない。三輪は米屋に視線で指示を出すと、米屋が頷いて少年の体を背負った。

「おっ?」
「何だ?」
「いや、だいぶ華奢な体だと思ったんだけどな。こいつ、かなり鍛えてるみたいだぜ」
「ほう?」

 米屋が小さく笑ってそう口にする。相手は線が細く、スラっとしている体形だ。だが米屋がわざわざ語る程筋肉がついているのだろう。

「ひょっとしたらかなり動ける(・・・)やつかもな」
「まさか」

 米屋の冗談を三輪は鼻で笑った。
 男の顔はとても整った穏やかなもので、身体の細さと相俟って戦闘からかけ離れた印象しか覚えない。
 だから三輪はこの米屋の言葉を聞き流す。
 この時はまだ、彼の存在がボーダーにとっても大きなものになるとは想像できなかった。

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