ハーメルン
荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集
外伝集・MLAL世界 その5
2000年に入り、トールはアフリカ大陸の制圧と砂漠の緑化を開始した、ユーラシア大陸がBETAの活動で平地化され、草木も無い土地の影響で大気の状態が非常に不安定化していたからだ。
「平和維持機のアレもひどかったが、BETA共はその星の環境保全なんぞ全く考えて無いな」
既にマイナスだが、トールのBETAに対する評価はさらに降下する。最終的にどのような形で決着が付くかは不明だが、創造主という輩が居るなら自分が砕かれて消滅する恐怖を味わって貰いたい所である。
そんな思考も無いなら、無理やり魔法か魔道具で人化させてからぶち殺すか、創造主自ら作った採掘機の前に放り出す積りだ。
「…サハラ砂漠の人達には悪いが」
自然界に存在する吸水ポリマーに似た特性の苔を南アフリカで発見しているので、それを活用して地中海までの砂地に一気に散布する結構大雑把な計画である。合成しても良かったが、生命の神秘というか同じ大陸内にあった事にトールはやはり地球生命は凄いと笑った。
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人類側は困惑している。
アフリカ大陸の砂漠、サハラ砂漠に異変が起きた。BETAとの戦いが始まってから用事が対BETA戦にしか無くなりつつあった地質学者が、概ねBETAが駆逐されたサハラ砂漠に調査に赴いた際、音楽を鳴らしながら等間隔で一斉に、何かを散布するロボットの姿を見た。執拗に、丁寧に、万遍なく。蒔かれたそれを確認すると、半ば乾燥した苔であった。
雨期の前に蒔かれたそれは、雨により一斉に芽吹いて広がり、砂漠地帯を薄い緑の絨毯で覆い尽くした。風によりめくれ、飛ばされもしているが、旺盛な繁殖力で砂地に広がっていく。
数ヶ月の間続いた雨期により、サハラ砂漠は表面上は緑地化した。無論、自然の繁殖ではありえない。ロボットの散布もあったが、サハラの均一な砂地に保水力を持った苔と栄養を含む土が増えている。
国際社会は、BETA戦線を支えるロボット達と同型機がいきなりしでかした事に困惑した。環境破壊だと訴える人間も居たが、元々砂漠の国に住んでいた人々は、この力技による緑地化を歓迎していた。
BETA側は錯乱している。
BETA側は、謎の機械群と起源を同じくする機械が行った行動に錯乱していた。何か、大規模な行動計画の一環では無いかと、頭脳級が分析を開始したが最終的に論理ループに陥り自壊を繰り返したので、調査と現状確認以外の行動を停止した。
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現在、海はロボットの領域だ。海底を進むBETAは、深海用ドローン搭載の音響兵器で内部破壊され、深度が深いほど危険と浅瀬や海上を選べば、防護障壁を展開した空中ドローンの攻撃で凍らされて粉々に砕かれる。多少潜った程度なら、最も数が多い海洋ドローンの餌食である。破壊後は有害な元素を回収し、残りは魚の餌になる。
かつて、滅んだ地球上で死んだ海を我が物顔で回遊する大型機動兵器母艦を、深海も含めて徹底的にバラして回ったノウハウが生かされている。
BETAは海を渡って戦力を差し向ける手段を失い、ユーラシア大陸に閉じ込められた。人類はかつての父祖の地、人類の生存圏を取り返すべく、徐々に包囲を狭めていった。
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2001年、本来であれば平和な世界に戻るはずの少年が、運命の日に戻ってきてしまっていた。
だが、変化している点にすぐ気付いた。幼馴染の少女が、半ばあれと化して死んでしまった彼女が、同じく困惑した顔で少年の顔を覗き込んでいる。部屋の天井は見慣れた自室だった。
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