ハーメルン
荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集
外伝集・HZD世界のその後 痕跡
その後の様子を見ようと、原始地球の状態だった2060年から計算して約900年、復興し、ある程度は人口も戻っているだろうと考えた2900年頃の日本本土に転移したトールは…、海没した。盛大に水柱を上げて。
「Jr! 本当に日本の位置で間違い無いんだよな!?」
『はい、星の位置から計算して間違いなく。海中に没した形跡もございません』
拡張したPip-boyには、エインズワースJrのコピーが組み込まれてアシスタントを努めている。
パワーアーマーを格納し、急いで海上へ上がったトールは、簡易的な浮島を設置。Perkのアクアボーイという水中呼吸能力は持っているが、沈み続けるまま海底にというのは水圧の問題から回避した。
いつものようにアイボットを派遣して周囲を探索しつつ、原子炉ではない潜水艦を建造して調査を開始した。ついでに、海中に沈んでいるホルス級を材料として次々と解体しながらである。
「ゾイドだ、ゾイドがおる」
『生物模倣の自動機械です。金属核の生命体ではありませんよ』
かつて対馬があったであろう所に浮島を設置し、そこを拠点に朝鮮半島の端に上陸したトールが見たのは、かつての地球上の生物たちと共存する生物模倣の自動機械達だ。ステルス化したアイボット達からの情報も土地ごとに分布の差異はあれど、同じようなものだ。
「人が居ない」
そう、人が居ない。朝鮮半島を離れて台湾、そして中国沿岸部を巡るが人の気配が一切ない。かつての文明の痕跡はあるが、地球再生後の新たな人類による活動の後が見受けられない。
『…確認しました。どうやら、旧EU圏とアフリカ大陸、北米大陸に新人類は生存圏を築いているようです』
「60年代の技術水準を受け継いでいれば、此方方面に足を伸ばしても不思議は無いんだが…」
『あの、ご主人さま。殆どの地域の人類なのですが、ウェイストランドでの部族社会のような生活をしております』
「何故に!?」
『基本武装は槍や弓などで、自動機械を狩って資源を賄っているようですね』
「だから何故に!?」
Jrの報告に困惑するトール。事前に想定していたチャリオットラインの停止の後、テラフォーミングと人工子宮による新人類の再生では、新人類の教育がただしく済めば文明が再繁栄していた筈である。
「…日本の痕跡を探そう」
海中にかつて設置した海流発生装置の最後の通信情報から、日本がまるごと月面へ転移した事を知ったトールは、遠い目をしながら「アインズさん達を連れて来なくて正解だった」とぼやいた。宇宙へ進出してくれとは言ったが、簡易マザーシップやZAXスーパーコンピューターを残したのがまずかったのだろうかと。
そして月へ旧日本人達が渡った際の転送周波数から、軌道上に未だ健在の簡易マザーシップを経由して、転送装置で月面にある日本列島にたどり着いた。
『遺伝子照合完了。ようこそ、救世の方』
「あーうん、歓迎してもらって何よりだが、月面に本土ごと移住とか予想外にも程がある」
情報交換後、トールは遠い目をする。
「…成程、月面へ生存圏を築いてそろそろ千年、地球再生は遠方観測で確認できたものの、文明圏らしきものは確認されず、待ち望んでいた新たな同胞の来訪が無い事に落胆していたと」
「はい。いいえ、トール、貴方に逢えた事は奇跡のような幸運と思っています。我々の人口は2億を超えて余裕は十分ながら、統制AIであるオモイカネが地球への移動を禁止しておりました…」
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