ハーメルン
荒野からやってきました外伝 荒野の災厄のやらかし集
外伝集・FSN世界 不幸な出会い
サーヴァントを傷付けるのは、神秘を宿す攻撃のみだ。霊基は高密度のエーテルで形成されており、物理法則の埒外にその本質を置いている。
傷は確かに付かなかっただろう。何せ、希薄ながらも霊体が重なる肉体という物質ではない、拳が衝突する前に発生した衝撃波が今の攻撃の主体である。
しかしながら、吹き飛んだ先にある建造物や地面は、これまたこの世界の存在で、僅かばかりの神秘が宿っている。ぶつかったり多少めり込む程度なら有効打には一切ならない所、荒野の災厄こと時空間も彷徨う理不尽は、ヌカパンチを実行した。実行してしまった。
「何者だサーヴァントか!?」とセイバーは言った積りだったが、吹き飛ばした男には「モルスァ…!」としか聞こえなかった。
結果、山林は列車砲の水平射撃を撃たれたかの如く直線と放射が入り交じるように吹き飛び、その中心に居たセイバーは距離にして500メートル以上を真っ直ぐに砲弾のように吹き飛んでその小さな体躯で大量の樹木を木片と木材に変えた。
受けた攻撃それ自体のダメージより、吹き飛ばされ、幾度も衝突した樹木と終点の巨石の方が、ダメージが大きい。
「な、何よ!? 何が起きたの!?」
「セイバー!?」
士郎は、凸凹ながら均された破壊跡を走って、吹き飛んだ先のセイバーの下へ向かう。凛はアーチャーを側に、ガンドの姿勢で目の前の惨状を作り上げた男を見る。
「マスター、早々に退却だ。アインツベルンの城へ行くには、目の前の障害が高すぎる!」
「わかってるわよ!」
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警戒と敵意と殺意を向けられているトールといえば、赤表示のままの目の前の男女と、遠くに向かった中立表示を見ながら、転移実験自体の成功と、不幸な遭遇による失敗を悟って冷や汗ダラっだらであった。
(いきなり斬りかかられたから反撃したけど、しまったなぁ、プリセットがヌカパンチだった…死んだあれ絶対)
暗がりでよく見えなかったが、反撃した相手は小柄な女騎士だったと思う。Pip-boyの表示に実験的に付けられた魔力センサーが反応している所を見ると、何らかの魔法的防御などの気配があるのかもしれない。だが、空間が歪む一歩手前の威力でぶっ飛ばした以上、無事に済むはずが…。
「まじか。どうなってんだ、人間なのかあれ?」
視界の端で、少年が女騎士を立ち上がらせた。不思議と、女騎士の鎧も剣もへし折れたり凹んだりはしていない。口の端から血は流れたようだが、しかとした足取りで剣を構え、此方に歩いてくる。足取りはゆっくりだが、明らかに激おこである。
「いきなり斬りかかられたから反撃したが、普通の人間なら爆散している威力だった筈だ。あれか、魔法ってやつなのか?」
アインズさん達とも交流が深いのでユグドラシルの魔法とその原典関連についても随分詳しくなったが、そういったものを知らない積りで口を開くトール。
「何を言ってるの? 貴方、この領域の主に作られたか雇われたんじゃないの?」
「領域の主? 親玉みたいなのがここに居るのか?」
そこでお互い「?」と疑問符を浮かべる。トールは少し考えて両手を上げた。
「あー、なんだ、構えは解かずに聞いてくれ、ここは日本でいいんだよな? 年代は教えて貰っていいか? 転移実験の直後で…」
申し訳無さそうに言うと、少女は眉尻をキリキリと吊り上げた。
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