疲弊のイタリカ
「仮に巨人の兵士たちだとして、相手は何か言ってきたか?」
「『イタリカに用があって来たのだが入れてもらえないか?』と言っているようですが……いかがいたしますか?」
「……妾が行こう」
身だしなみを軽く整え、防壁の上へと上がる。対応に当たっていたノーマとハミルトンの表情が明るくなる。
「姫様!」
「巨人だと?」
「はい、あちらに……」
まず目を引いたのは、言わずもがな、巨人ことラビオットである。単眼の巨人は動くことなく立っているが、その大きさは、その気になればイタリカの防壁を拳で壊すことが出来るだろう。
(何と言う大きさ……。はっ、いかんいかん! 巨人は一体だけだ。だとすると兵士というのは……)
巨人の足元へ目をやると、鉄で出来ているであろう荷車と、1人の兵士がいた。
「我々はイタリカへ用があって来た! この巨人は我々の護衛だ! どうか中へ入れてもらえないだろうか!」
「……姫様、どうしますか?」
「……恐らく、イタリカの現状を知らぬのだろう。あの巨人は、いつでも壁を壊せるのにも関わらず、大人しくしている。むやみに力を振るうことは無いだろう。それにこの状況だ。炎龍をも殺せるという彼らの力を、借りたいところだ」
ノーマは巨人が本当に目の前にいることに驚き、野次馬として見に来た見張りの義勇兵は、不安に満ちた顔をしていた。
「他に人がいるなら、姿を現してほしい! 誰がいるのだ!」
すると、兵士が鉄の荷車に手招きする。そこから降りてきたメンバーに、ピニャたちは驚く。
「リンドン派の正魔導師に精霊使いのエルフ、そして……ロゥリィ・マーキュリーか!」
「あの女の子が、ですか?」
「戦える女性とは少なくないのですな」
「どうしますか? 入れます?」
「……あの者たちの力を借りよう。下手に怒らせれば、かえってこちらが滅ぼされかねん」
先ほど大声を出して呼び掛けていた男に、ピニャは答える。
「良いだろう! 今から門を開ける!」
こうして、巨人の兵士たちことバイス達は、イタリカへと入るのであった。
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