ハーメルン
アラサーがVTuberになった話。
112話  新マネージャーと作戦会議

11月×日

 新マネージャーの窓辺さんとの打ち合わせ。当初は顔合わせのみだったのだが、今後の活動に関する方針を話し合う場となっていた。私自身後輩や先輩との差がどんどん開く一方で、流石に申し訳なくなってきたという思いもあり、積極的に意見を取り入れてみようと思う。彼女もわざわざ新しく担当になるということで、色々情報を集めていたらしいので、第三者の目線としての忌憚のない意見をもらえるだけでも助かる。リスナーさんからの意見は良くも悪くも、こういうありのままの私でも受け入れてくれるような寛容な人が多いというか……身内贔屓とでも言ったほうが良いのだろうか? 新規顧客を獲得するために何かしらのヒントでも掴めたら嬉しい。

「やっぱり事務所的には配信でスーパーチャット機能オフとか問題になっていたりしますか?」
「いえ。その辺りは特に。わたしの知る限り、ですけど。付けてくれたほうが喜ぶ人はいますけどね」
「窓辺さんも?」
「わたしは今のままで良いかと思います」

 てっきりその辺何か言われると思っていたが……犬飼さんといいある程度演者の裁量に任せているのか。まあ私の場合少しばかり立ち位置が他のVと異なるというか、変わったところがあるのでその点も加味してのことかもしれないけれども。

「神坂さんの場合ボイスやグッズの売れ行きが好調な背景は、普段からスパチャーーお布施を受け取らない姿勢が視聴者の購買意欲をより刺激しているのだと思います」
「どうしても動画サイト経由だと手数料ありますからね」
「割合として決して少なくはないですからね。こればかりはプラットフォームを使わせて頂いていると言う立場なんで文句は言えないですね」

 自前の配信プラットフォームでなく既にあるサービスを利用する以上手数料というものは当然必要になる。特に収益化――スーパーチャットに関しては特に顕著である。約3割程が手数料として差っ引かれる。企業としては当然だ。サイトの維持管理費だけでとんでもない負担があるので、これに関してはまあ致し方ないと思う。某林檎印の端末、サービス経由だとさらにその分の手数料もお代わりされるため5割程度になってしまうとか。少額ならいっそボイスやグッズでの売上に期待した方が良い。同じ金額を払うにしてもそう言ったものの方が形として手元に残った方が良いだろうし。

 ボイス関係の販売プラットフォームは数パーセントの手数料で済むし、買い切りで購入後は何度でも繰り返し再生することが出来るしお買い得感があるのである。普段そういう枠を設けない分、「じゃあボイスくらいは買ってやるか」と思ってもらうことが狙いでもある。

 スパチャを投げる理由の一つとして世間ではコメントや名前を推しに読んでもらいたいと言うものがあるそうだが……私の配信の場合元々の視聴者、コメント数が少ないので投げ銭などなくとも普通にコメントは適宜読み上げているからなぁ。それに、こう言っちゃうと企業勢としてはアウトなのかもしれないが、生活を圧迫するほどの金額を投げてもらっても正直複雑なのである。

 しかし、9月にあった新衣装配信のような場合は勿論スパチャ設定を入れるつもりだ。製作にかけた工数分は資金を回収しないと色々現場の人間が口煩く言われるのは、実体験としてあるわけで……それを考えれば付けない、なんて真似は出来ない。たまーにオンにすると私みたいなのでも思った以上の金額が投げられていたのは正直想定外だったが。mikuriママや酢昆布ネキと言ったほとんど身内みたいな人達から高額のスパチャ貰って下駄履いているような感じだし……

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