ハーメルン
アラサーがVTuberになった話。
114話  クッキー作り

11月×日

 昨日の台詞読み上げの配信は中々好評だったらしく、ファンの人がいつもより多くの感想をツイートしているのを見て少しだが手応えを感じた。同時接続者数も普段の倍以上というのを見るに、既存ファンユーザー以外の人にも需要があったのだろうか? その辺りは何とも言えない。

 アーレンス嬢が『マリーオンカート1位取るまで耐久配信』を行っていたのだが、それを途中で放棄して何故かこちらの枠を覗いてくれていたらしい。まあ長時間同じ作業を続けるというのは、最初は中々辛いだろう。慣れるとそうでもないけれども。息抜きくらいにはなってもらえればいいかな。そんな彼女のリスナーさんもこちらに流れ込んだ形となったので、あの数字に浮かれてはいけない。あれは私個人の力によるところではないのだから。

 配信ではアーレンス嬢以外にもmikuriママや酢昆布ネキもコメントを投げてくれていた他、月太陽コンビの後輩ちゃんズも配信用のハッシュタグを付けてツイートしていたので、リアルタイムでチェックはしていたようだ。例によって彼女たちの熱心なファンからは反感を買いそうなのだが、大体いつもそれなりの苦情は届いているので若干感覚が麻痺してきているせいか、来ている苦情がどの件に関する事なのかイマイチ分からなくなってきている。いや、本当に申し訳ない。

「昨日の配信はとっても良かったと思います。花丸貰えちゃう感じです」

 と、この企画を共に考えた新マネージャーの窓辺さんことマドちゃんも好感触だったらしい。花丸を賜った。今思い返すと、ここで即座に「わーい」とか無邪気に喜ぶリアクションでも取った方が良かったんだろうか? それ以前に彼女の中で私って男児を相手にするイメージだったりする? 問題児と言う点においては一切否定はできないが。

 このVTuberと言う職業は結果が具体的な数字となって広く公表されてしまう。これは動画サイトの仕様上当然というか、視聴数や高評価低評価者数は誰にでも見える状態にあるためである。それ故その数字で騒がれる事もままあるわけで。良くも悪くも話題になりやすい。誰の数字がどうだとか、数字で格付けしてランク分けされるコピペみたいなものまで出回っている始末。逆に言えばそういう要素があるから盛り上がっているとも取れるのだけれども。営業成績やら売上を社内のホワイトボードに張り出された社会人時代とそう変わらないような気がしないでもない。

「あまり頻繁にやると特別感が薄れてしまうので、適度に期間空ける方がいいかもですね」
「そもそも頻繁にやれる程お便り届いてないですけれどね」
「あっ……(察し」

 この手の企画は頻繁にやるものではないだろうし、何より前回の配信で希望のあった台詞のほぼ大半を消化してしまっている。一応特定の商品や作品のPRと取られないようにチョイスが偏らないように弾いた要望もそこそこあったりはするけれど。個人ではなくあくまで企業所属としてその辺の線引きは色々難しい。今度やる場合は自分で判断できないものは窓辺さんに確認はしてもらうつもりだ。

「そう言えば、今月末()()()やりましょう。使用許可は以前頂いていたとのことですけど、改めて申請して社長から直々に了承貰ってますんで」

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