ハーメルン
アラサーがVTuberになった話。
127話  トレンド入り?

12月×日
 師走である。企業によっては決算月だったりもするので色々忙しかったりもする季節。何か無くても年末で大きな休みも控えててんやわんやする。VTuber的には別に何かあると言うわけではないのだが、年末年始配信をお休みする人も珍しくはない。上京してきている人が実家へ帰省したりとかそういう事情があるのが大半だ。Vだって生きてるんだ。その辺もある程度はお目溢し頂けると、同じ業界人としては嬉しい限り。まあ私は別にそういったことはないんだが。実家暮らしだし。年始、お盆の時同様に親戚が挨拶回りにやって来るという点以外は特にこれといった予定はない。ちょっと居辛いんだけど。従姉弟の相手して時間潰すのが一番平和に過ごせそう。幸いこの職業柄割と最近のゲームも充実しているし。ただ、弟君の方に若干身バレの危機があるので、正直あまり部屋に入れたくはないというのが正直なところではあるのだが……

 閑話休題

 さて、昨日夜にあんだーらいぶの事務所で機材を借り、初のASMR配信を終えたわけだ。その後片付けの後予約したホテルへ移動。事前準備の疲れから速攻で爆睡。シャワーだけ浴びて始発の新幹線に飛び乗って帰省。駅から徒歩で自宅に到着。玄関の扉を開けるとマイシスターの姿があった。帰宅時間とかこの子に伝えた覚えはない。父親の方には連絡していたので、そこから聞いたのか或いは私が好きすぎてずっと玄関で待っていたのか。お兄ちゃん的には後者であれば嬉しい。とっても。

「お兄ちゃん……SNS見た?」
「んえ?」

 「お帰りなさい、お兄ちゃん」という言葉を期待していた私にそんな台詞を開幕第一投目で投げ付けて来る妹。えっ、何。何か炎上するような事したっけ……? 社長のマイクが故障したとか。肉の染みや匂いが……? いや、もしやゲームメーカーからの苦情か。流石にそれは不味い。一応権利の問題とか不安だったので、収益化関係は切って配信していたとは言え。そうなったら謝罪案件だ。事前に社長に話は通してたから大丈夫だとは思ったんだが、これはいよいよ不味い事になってしまった。

「昨日めっちゃバズってた」
「…………は?」
「関東圏のトレンドのすっごい下の方に入ってた」
「炎上で……?」
「ちがうちがう。ゲーム起動音で」
「えっ、なんで?」

 神坂怜 チャンネル登録者数17000人(+2400人)

 目を疑ったがどうやら現実らしい。滅茶苦茶登録者数が増えている。14600人だったのが今や17000人。なにこれこわい。炎上が原因じゃないというのだけは幸いだが。急にこんな増えたらびっくりするじゃないか。この業界何がキッカケでバズるか分からない。凄い人だと1日で数万人増えたりとかもあるらしい。伸びないときは本当に伸びないので、色々読めない業界である。

「帰宅する今の今まで気付かなかったのある意味凄い」
「新幹線全然ネット繋がらないからさ……トンネル多すぎるんだよね」

 我が県から首都圏を繋ぐ新幹線はトンネルばかりでろくに電波が繋がらない。今後改善されるらしいのだが、中々に不便である。前はそれほど携帯使って何か時間を潰したりって言う事はしてこなかった。大体仕事関係の連絡が主だった利用目的だった。今は『神坂 怜』の公式SNSの更新やらファンの人が何か感想呟いていたりしないか覗いてみたり、同僚や同業者、関係者、常連のリスナーさんのツイートなんかも空いた時間にチェックするようにしている。ある意味営業活動の一環に近いと勝手に思っている。ネットでの活動が主なので、その中での繋がりって言うのは非常に大事なのである。ネットでもリアルでも人間関係が大事って言うのは変わらない。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/9

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析