ハーメルン
アラサーがVTuberになった話。
128話  打診


 そういうスタッフメンバーさんの労働状況はどうなんですかね? と言う非常に失礼な考えが脳裏に過った。以前の担当マネージャーだった犬飼さんの様子を見ている限りではあるが。窓辺さんは別段そういう様子もないので人員確保されたと見て良いのだろうか。それか新人さんだしそもそも負担が少な目なだけか。人の心配しているが、私も偉そうに言えた立場ではない。9月に体調不良でお休みしていたわけで……

「年末なんですが、公式チャンネルで特番をやろうという案がありまして」
「年末特番ですか。公式チャンネルで来年は色々そういう特番を定期的にやりたい、っていう意図ですかね」
「えぇ。まあそんな感じですね。公式チャンネルあるのにあまり活用されていないので、既に空気と化してますからねぇ……折角登録者も結構いるのに」
「勿体ないですもんね」

 実は『あんだーらいぶ』にはライバー個人ではなく、事務所としての公式チャンネルが一応存在するのだ。何故に『一応』と表現したのか――それは配信や動画のアップロードが活発に行われていないからである。一応グループでのコラボ企画などで昔は結構利用されていたのだが、最近では各個人のチャンネルを利用される事が多い。実際演者各々のチャンネルでやった方が登録者増加も見込める、という側面もあったのかもしれない。私が過去に出演経験のある『あんだーらいぶ放送局 Season2』はニヨニヨ動画の方のチャンネルから公式番組として配信されたものであってこっちのチャンネルとはまた別口なのだ。とは言え、あっちの方もあれ以降新人加入毎に番組をやったぐらいだが。YourTubeのチャンネルの方は告知や公式として投稿している切り抜き動画が投稿されている程度であり目玉らしいコンテンツがないのが現状である。

 投稿コンテンツ数の割には登録者は10万人近い数値。確かにこれでは宝の持ち腐れ。公式番組を積極的に配信して行こう、と言う方針転換になったのだろう。確かに妥当な案だとは思うし。年末年始は地上波のテレビ番組などでも特番が多く放映されている。ただ昨今はテレビを見ないユーザーも多いと聞く。人気のソーシャルゲームやアニメなどはスペシャル放映としてやっていたりもするし。大手放送局が歌合戦やっている裏でアニメやゲームミュージックのみをピックアップした歌合戦をやったりと、そう言ったテレビ離れのユーザーを狙った番組も昨今では数多く打ち出されている。

 まあ実際、VTuberコンテンツにどっぷり浸かっている人って大体ネットで完結させる人が多いんじゃないだろうか。ドラマやアニメを録画してみる程度、と言う人が特に。何ならネット配信事業も盛んになって来ている現状を考えれば、今後は更にそういう方向に進んでいくだろう。そりゃあテレビで華々しく活躍している芸能人さんもYourTube始めるわけだよ。意外とテレビで大活躍していた人よりも、ひな壇で脇役だった芸人さんの方がネットでウケが良かったりでチャンネル登録者が大御所芸能人さんに勝っていたりという下克上も見て取れるのが面白いところである。

 個人的にはこう言った番組をやることは大賛成だし、そもそも私が企業の決定にいちいち口出しするのもあれなんだが……それでも一点言いたいことがある。

「私じゃ数字的な問題ありません?」

 そう――数字が取れないのである。先月ASMR配信で多少バズったとは言え、だ。人選としてピックアップされると言う事は全員忙しくて仕方がなく、と言うのが一番ありそうな理由。公式番組ならそれこそ数字や結果が表でも裏でも色々言われるだろう。普段の個人配信よりもずっとずっと。

[9]前 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:2/9

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析