2巻発売記念 閑話『同人誌即売会(夏)』
「あの子の事大切に想ってくれているならわたし的には全然オッケーだけどね」
「マジで女性ばっかだな」
「そうね。最近女の子のキャラクター本が多かったから、そのギャップにちょっとビックリ」
「でもウチのファンなんて野郎ばっかだからな、新鮮だわ」
息子を褒められて嫌な気持ちになる親はいない。暑さも忘れてついつい口元が緩んでしまう。普段はやれ同時視聴者数が箱の中で一番少ないだとか、低評価数が多いとかネット上では悪く言われている事の方が多いあの子だけど……確かにこうして応援して、推してくれているファンの人が居る。そのことが嬉しくてたまらない。あの子がやっていることを認めてくれる人がいる。
「酢昆布先生! いつもお世話になってます!!」
「おっすおっす、買ってくぅ?」
「勿論です! mikuri先生のも含めて購入させていただきます。いつもアレがお世話になってます」
「ねぇ、すーこ。何目線なのこの人……」
「アレ民は大体こんなノリ」
「えぇ……」
「安心してください、神坂きゅんには手出しはさせませんので! 毎月ボイス買ってます、最高っすね!」
そんなやり取りの後滅茶苦茶ガタイの良いタンクトップのお兄さんがホクホク顔でブースを後にした。ボイスまで購入しているところから察するに男性ファン……と言って良いのだろうか。どう話を聞いてもアレちゃんのファンっぽい人なんだけど。
「アレちゃんのファンってみんなああなの?」
「さっきから3人中3人があんな感じだったでしょ。大体あんな感じ」
「後方何面って言うの、あれ」
「後方アンチ面で良いんじゃ?」
「いや、彼らファンだよね!?」
「愛のある叩きと言うか。ホラお笑い芸人さんでも愛のあるツッコミ、みたいなのあるじゃん? あんな感じだよ。多分」
スーツだったり、軍服のコスプレ、何故か段ボール箱に人気ロボットアニメのタイトルがマジックでデカデカと書いてあるのを被ってる人とかバラエティ豊かな人材だなぁ。
「みんなアレにヒョロガリって煽られてたから筋トレに精を出してムキムキになる子が多いらしい」
「絶対努力の方向音痴だよね。運動することは確かに良い事だけど」
「最後の彼、多分ボディービル大会で優勝してたリスナーやね」
「なんか凄い結果だしてる!?」
「流石のワイも困惑した。アレが反面教師になっている反動か出来た子が多いんよな」
ファン層が濃すぎるよ、アレちゃん……
◇◆◇◆◇◆
「完売御礼ってやつだわね」
「そうね」
「こっちのお客さんも濃いけど、そっちもすっごいの来たよねぇ……」
「車椅子メカクレちゃんと謎のお嬢様ね……」
午後の頭くらいにやって来た車椅子の女の子。お喋りが苦手なのかちょっと言葉に詰まる場面が多いし、自分への自信のなさの現われなのか髪も随分伸ばしていた。ああ言う子からも好かれているとかやっぱウチの子は格好良いんだな、うん。「好きです」と言うわたしに言うべきじゃない愛の告白されちゃったぜ。本人にも伝えてあげて欲しいものですなぁ。
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