2巻発売記念 閑話『同人誌即売会(夏)』
こう言った会場で車椅子でやって来るのも目を引くがそれ以上に意識に残っているのは、彼女の連れらしき少女。ワンピースに麦藁帽子に艶やかな黒髪。見るからにザ・清楚って感じの子。そして彼女の事を『お嬢様』と呼び、従う2人の従者さん。執事服の老紳士と男装の麗人と言うどこの作品から来たんですか? と問いたくなるような人たちだった。
「すーこ……あれってコスプレなのかな?」
「いやいや、あの付き人2人はガチでしょ。所作がただのレイヤーのそれには見えなかったぞ。まずあのお嬢様のワンピースはイタリアのブランド物。それにあの腕時計見た? ありゃあ普通の人にはまず買えない類いのそれよ。地価の安い田舎なら家建てれるレベル」
「うっそでしょ…………」
思わず言葉が詰まる。金額にもだけど、そもそもそんな探偵みたいな観察眼を持っているあんたにもビックリよ。他レイヤーさんの服装とか参考にするためなのかもしれないが、自分で服を買わないくせにブランドとかはわたしより詳しいんだよな。あんたが女子力を人並みに身に付ければそれこそアイドルとして食っていけそうな気がするわよ……
「あのお嬢様、普通にリアルタイムでファンスレに書き込みながら移動してたな。ブースから離れるときとか『ワイ』とか言ってた。仲間だぜ……」
「残念美人の一人称なの、それ……?」
「え? 美人? でへへへ」
「はいはい、可愛い。可愛い」
「でもガチもんのお嬢様かー、すっげー……色々妄想が捗るな。でへへ」
「ファンを使って勝手にカップリング妄想するの止めなさい」
「そういや、さっき休憩中にトライデントせんせーのとこ行ったけど不在だったな。今度こそ美少女かオッサンか突き止めようと思ったのに」
「あら、そうなの? 午前中わたしが挨拶行った時も不在だったのよね」
トライデント先生と言うのは、息子とも仲良くしてもらっている『あんだーらいぶ』の柊冬夜君の担当イラストレーターのトライデント山下さんのこと。1~2年くらい前から相互フォローしていて、怜くんがデビューしてからは少しやり取りもしたりするくらいには親しくさせていただいている。
「当人が隠す気がないのに何故か美少女扱いされてるのよね……」
「毎年自分のブースにいるはずなのに何故か誰にも観測されない謎な人。未だに性別不詳とかおもろすぎるでしょ。実は非実在の存在だったりしない?」
「さすがにそれはないわよ」
「あ、そういえば。トライデントせんせーのとこもアラブの石油王とSPが来たってさっきSNSで見たぞ」
「な に そ れ」
マジで色んな人がいるわね……即売会恐るべし。本当に世の中には色んな人がいるんだなって思い知らされる。でも自分ではなく、息子のファンとの交流と言うのは中々どうして悪くはない。早くも次の冬の即売会が楽しみになってきた。気が早いけど。
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