ハーメルン
アラサーがVTuberになった話。
14話  雨のち晴れ

「ブラン嬢という色眼鏡抜きに見てほしいなら、まず次の歌リレーでやってみない?」

 てなわけで彼女の順番の交代を画策。しかも前枠は私と言うデバフ――特にブラン嬢ファンには嫌われている私だ。だがそれだけでは足りない。そこから先は彼女の覚悟を見せる必要がある。

「自分の口からきちんと言うんだ。世の中察しの良い人ばかりじゃあないからさ」
「自分の口で……」
「まぁ、あれだよ。あたしの歌を聞けぇー! ってな感じ良いんじゃない? こういうのはド直球な方が良いよ。含ませると割と拗らせて解釈しちゃうし」
「あたしの歌を聞け……なるほど」

 最後は丸投げ。この界隈のファン、基本可愛い女の子が一生懸命に話せば大体折よく解決するのである。イエーイ、美少女最強! ひゃっほーい。ブラン嬢曰く彼女の歌はかなりのモノらしいので、それも併せれば何とかなるだろう。私経由で通話繋いで二人で話し合ったし、多分。きっと。恐らく。


 実際のところ日野嬢1番の問題はリアルサイドの方。

 リアル面――正直周囲の大人が気を配ってやればここまで拗れなかったんだよなぁ。幼少期に個性を否定する事は躾以前の問題だ。今更その連中に言っても仕方ないし、出来るのは日野嬢とブラン嬢で腹割って話してもらう事しかない。

 ただ恐らく、クラスメイトはどっちに転んでも多分受け入れると思う。話を聞く限り、ブラン嬢はクラスカースト上位なのだから、彼女が是とするなら周りは従う。日本人ってのはそういうものなのだ。波風を立てることは避ける傾向にある。「どう転ぼうが、君たちならきっと大丈夫」と説得力皆無の励ましコメントに意味があったのかは分からない。

 ――もっとスマートに解決出来ればなぁ……

 そういう気遣い出来る人間ならそもそもこんなに炎上しないし、登録者だって多いか。歳食ったとは言え、まだまだ精進が必要なようだ。


5月×日

 Vtuberにとって同接――同時接続数とはその演者を評価するある種の物差しである。特に今回のようなリレー企画ともなれば、それがより一層明確に現れる。コメント欄に何人か見覚えのあるユーザー名を見つけ、少しだけ安心する。サンキュー、酢昆布ネキ。以前ちらっとmikuriママから聞いたけど、酢昆布先生もVtuberのデザインを手掛けてたりもするらしい。私の枠常駐してないで、そちらを見てあげた方が良いのでは……? いや、普通にありがたいんだけれども。

 あぁ、今はそれどこではなかった……


「誠に申し訳ございませんでした」

 心からの謝罪。そらそうよ。ブラン嬢で1.2万人、常闇先輩で1.1万人、そんでもって今の私が6000人。約半分5000人が消えたのである。約半数が消えた。うわっ……私のデバフ、強すぎぃ!



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あんだーらいぶを語るスレ XXX配信目
 

587 名無しのライバー ID:ShM4mnQCm
スケジュール変更で燃えるんか

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