ハーメルン
アラサーがVTuberになった話。
74.5話 世の中広いようで狭い②

◇◆◇◆◇◆

「思ったより遅かったね」
「あー、うん。ちょっと話してた」

 お祖母ちゃんに()()()からお土産に、と持たされてしまった水羊羹を渡すとニッコリと笑って「お茶でも淹れよう」と言う。実はあちらで既にご馳走になったが、黙っておこう。美味しかったし。『太る』とか言う人は許さないからな。これでも一応平均よりは軽い方だから! 一応毎日腹筋とかしてるし。長期休暇中くらいは自堕落な生活をしたいんだもん。『普段がしっかりしているか?』と問われると……うーん、ノーアンサーでお願いします。戻ったらちょっと部屋片付けなくちゃ。ちょーっとだよ? マジで。

「――で、どうだったかい?」
「どうってなにが?」

 嬉々とした様子で尋ねてくる祖母。彼氏の1人でも連れて来いだとか、ひ孫の顔が云々とか言われている身としては何を期待しているのかを何となく察するが、帽子をパタパタと団扇代わりにしながらあえて誤魔化す。

「そのままの意味だけど」
「悪い人じゃあないと思うよ。ちょっと変わった人だね」

 物腰が穏やかだし。変に人の胸や脚をじろじろ見るわけでもなく……ちょっと怖いくらい真っすぐに、本当に真っ直ぐに目を見て話す人だった。まるで何か腹内を見透かされているような感じがして、逆にこっちが視線を逸らしてしまった。後ろめたいことがあるみたいじゃないか、私ぃ。人様を勝手に値踏みしていたせいかもしれない。いや……後ろめたいのは()()()()()()()ね、私。

 顔は普通だと思うけれど声は凄く魅力的に感じた。そこは私の職業柄、なんだけれども。後、鎖骨は中々良かったと思います、うん。後は――

「ただ……何だろう…………作り笑いしてるというか、そういうのだけは気になったかな」

 きっと単純に笑うのが苦手なんだろう。意図して笑っているような表情を作っている感じ。特殊な業界にいるせいか、そういう人の機微、顔色うかがいが上手になってしまった私だから違和感を覚えたんだとおもう。会話していて不快になったりだとか、そういうものではないのだけれども……

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