ハーメルン
アラサーがVTuberになった話。
78話  声劇2★

9月×日
 羽澄先輩からのお誘いで、あんだーらいぶのメンバーで行う『声劇』企画の配信に誘われた。面子としては、主催である羽澄先輩。そして朝比奈先輩、月と太陽コンビ、私といったメンバー。数か月前の私であれば間違いなく断っていただろう。以前台本を書いてもらった恩もある羽澄先輩の誘いを断り辛かったのもあるが、後輩2人からのコラボの誘いをずっと回避していた背景もあり今回は腹を括って参加させていただく形となった。ネタや冗談だろうとずっとお断りされ続けるのは、一部のファンは不快に思うかもしれないし、箱全体で不仲とかそういったイメージを持たれるのも避けたい。

 「重箱の隅をつつくような事なんてあるのか?」なんて事を聞かれるかもしれないが、この界隈往々にして想定外の方向から叩かれることが多いのである。この辺は人気コンテンツだから仕方の無い側面もある。

 また、男性Vとの絡み自体を快く思わないファンがいる事も事実なわけで。多少荒れる事は覚悟の上だが、問題は他参加者がその余波に巻き込まれないか――ということだけは懸念事項であった。

 そのため事前に羽澄先輩には『そういう可能性もありますよ』という事を伝えて、参加予定のメンバー全員にもそれらを共有――したのだが、全員即答でゴーサイン。うーん、どういうことだってばよ。炎上商法とかいう奴なんだろうか。確かに、この場合基本的に私が悪い事になるので他参加者は基本被害者という扱いになるのか。まあ余りに彼らを批判する意見が多いようなら、別に意識を向けさせれば良いだけの話。

 それでも私にしては随分思い切った決断だったなぁ、と全てが終わった今しみじみと思う。少しはまともな人間らしくなっただろうか? あるいは遠ざかったのだろうか。

 肝心の配信内容だが、羽澄先輩が事前に募集していた話題や台本をベースに加筆修正を加えたものらしい。先輩が端役に徹するような形になってしまっていたのが、申し訳ない。
 男女でカップル役とか明らかにそういう層に喧嘩売ってるんだろうなぁって言うようなシチュエーションのものもあったのだが……批判的なコメントは思ったよりは少なかった。そういう類のものは裏で早々に消去していたのかもしれないけれども。

 あくまで『お芝居』として見ている人が多いので、私の杞憂で終わったのなら幸いだ。もっとも苦情が全くなかった、というわけではない。思ったよりは少ない、というだけの話。この手の苦情やご意見は過去に4桁程貰ったことがあるのだが、マシュマロに届いたのは3桁に留まる程度。それなりのものを覚悟していただけに、少し拍子抜けしている。これは私の演技が中途半端だったのも関係しているんじゃないだろうか。それはそれで凹んじゃう。

 妹くらいの年代の子相手と言うこともあってか同じような声色で演じてしまったせいか『恋人』というよりか、『兄妹』として見られてしまったようだ。

 演じる場面では、私の相手役だった日野嬢が台詞を飛ばしてしまったり、噛み噛みだったりするのを見て非常に申し訳ない気持ちになってしまった。そら、演技でも年頃のお嬢さんが恋人同士を演じるなんてのは酷なことだ。今度事務所通して何か菓子折りでも送ったほうが良いのだろうか。

 ちなみにあの後配役を入替えてブラン嬢を相手役として行った。

「どこ行きますか?」
「ルナはどこ行きたい?」
「うーんとね、海! 新しい水着買ったんだ」

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