ハーメルン
アラサーがVTuberになった話。
79話 前世持ち
9月×日
圧力鍋を買った。煮込み料理をすることが多いので、ついに買ってしまった。小豆を煮たり、プリンを作ったりなんかも出来るらしい。付属されていた圧力鍋の活用レシピの小冊子を眺めながら、梅昆布茶を啜る。
「平和だ」
「ニャー」
膝に乗った虎太郎を適度に撫で回しながらレシピ本と睨めっこ。後で他の調理法もネットで調べてみることにしよう。近年は動画付きで紹介されているものも多いので、便利な世の中になったものだ。とは言え基本的にレシピをそっくりそのまま真似てっていうのはあまりしないのだけれども。我が家は基本的に薄味なので、細かい味付けは勝手にアレンジしている。昔はレシピそのままでやったりしていたが、イマイチ納得できない出来栄えのモノが多く自分で手を加えるようになった。
――何故唐突に圧力鍋トークをしているのか?
ボイスやらグッズの収益も決して多くはないが手元に入るようになった。配信に還元するべきなのだろうけれども、ボイスやグッズを購入したファンからは『妹ちゃんのために使ってあげて下さい』だとか『生活に役立てて下さい』とか滅茶苦茶言われるので素直にその言葉に甘えることにしたのだ。と言うわけで圧力鍋をデパートで購入したわけだ。
神坂怜@圧力鍋買いました
@kanzaka_underlive
圧力鍋買っちゃった買っちゃった買っちゃった
とまあこんな報告ツイートをした。今更思うが凄い痛々しくないか? いい歳した大人がうっきうきでツイートしているとか。でも家電とかこういう調理器具とか新調するとテンション上がったりしないだろうか? 子供の頃に新しい玩具を買い与えられた時のそれに近い感覚だ。
ちなみに、こうした活動で得た収益で「○○買いました」みたいな報告をする演者も少なからずいる。柊先輩はガチャの資金、羽澄先輩は下着、獅堂先輩は食事関係に使ったとかSNSに報告するツイートが過去にあった。お金を投げた側としてはそういう報告があった方が嬉しいのだろうか? まあ応援している演者の生活が潤う事が彼らにとっての幸福に繋がるのかもしれない。
食事や衣類なら理解出来るが、ガチャ資金に消える事をファンが容認しているあたり流石。先輩の人徳と言うかキャラだからこそ、かもしれないが。ある意味では経済が回っていると捉えることが出来なくもないが。そもそも、Vtuber一本で生活出来ている人なんて業界ではほんの一握り。勿論、私はその一握りには含まれていない。家の維持費やら光熱費を賄いきれない。そういう事を考えると専業で生活している諸先輩方の凄さを改めて思い知らされる。蓄えは多少あるとは言え、実家暮らしでもなければ今みたいに活動してなかっただろう。
きっと再就職することにはなるだろうけれども。それでも今の活動は続けたいって想うのは身勝手だろうか? 我儘だろうか? それでも私はまだ何ひとつ返せていない。沢山の人たちから与えてもらったものに対して何ひとつとして。少なくともそれまでは辞めたくはない。もっとも、事務所から言われたら辞めざるを得ないけれど。そうならないように活動したい。
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