第002話:解石
[スタン]
わしが意識を取り戻したのは、暗い地下室の様な場所じゃった。はて、何がどうなっておるのじゃろう。……そうじゃ!ネギ、ネギはどうなった!?わしは村を襲った悪魔と相打ちで、石化の呪を受けてしまったんじゃ!ネギを庇って!
「こ、こうしてはおられん!……と、とと。か、身体が……。」
身体が言う事をきかぬわ。節々が、強張っておる。これは……おそらく長期に渡り、石化されておったためじゃろう。何?長期に渡り?……と言う事は、あの村の襲撃は既にけっこうな昔の事になっておるのか?
「く、いったい何がどうなっておるんじゃ……。ネギは助かったのか?石化が解除されたと言う事は、誰かしらの手により解呪されたんじゃろうが……。」
周囲を見回すと、村の連中が未だ石像になったまま、突っ立っておる。わしだけが石化から解放されておるのは、何故に……。と、その時ふと、赤毛の後頭部が石像の群れの合間に見えた。あれは……!!
「ぼーず!待て、待つんじゃネギ!」
「……スタンお爺さん。」
「ネギ……ぼーず、じゃろう?……大きくなった、な。」
後ろを向いたままのぼーずの背は、10歳前後と見ゆるほどに成長しておった。となると、あれから7年は経過しておると言う事か?いや、それよりも。この場には、わしとぼーず以外に動く者は無い。と言う事は……ぼーずが、まさかとは思うがわしの石化を解除したのはネギぼーず、なんじゃろうか?
「ぼーず、何がどうなっておるんじゃ?わしはあの悪魔に、相打ちで石にされてしもうたはずじゃ……。それが……。」
「スタンお爺さん、お爺さんたちの石化は大人の魔法使いの人達でもどうにも手が出せなかったんです。そしてここ、メルディアナ魔法学校の地下室に皆、移されたんです……。いつか石化を解呪できる可能性に賭けて……。」
「……それで今、わしが治ったと言う事は、メルディアナの連中が?」
わしの問い掛けに、だがぼーずは首を振る。
「爵位級悪魔による石化は、さっきも言った様に、あの人たちでは手が出ませんでした。僕はあの事件以来、まずダイオラマ魔法球を造る事から始めたんです。そしてそれが完成してから、その中で必死に研究と修行に励みました……。」
「な、何!?」
「そしてついに、悪魔による石化を解呪するための魔道具を完成させたんです。ただ、使い捨てなのが残念ですけど。スタンお爺さんの足元にある包みが、その魔道具の杖です。村の皆に行きわたるだけの数がありますから、それで皆の石化を解呪してあげてください。使い方は、包みの中に説明書きを添えてありますから……。」
そう言って、ぼーずはわしから離れる様に歩き出す。わしは慌ててそれを制止した。
「ま、まつんじゃ、ぼーず!何処へ行く!?」
「……会わせる顔が無いんですよ。村の皆に。本当はスタンお爺さんとも話さないで消えるつもりでした。でも、魔道具の事を最低限説明しないと……。」
「な、何故じゃ!何故ぼーずが消えねばならん!なんで会わせる顔が……。」
「僕のせいで、村は襲われた!」
「!!」
ぼーずの声は、涙混じりの声じゃった。わしは目を見開く。違う、ぼーずのせいじゃないんじゃ、そう言いたかった。だが舌が言う事を効かん。
「あの悪魔どもは、村人の皆は石化に留めた……。けれど、僕には明らかな殺意を持って襲いかかってきました。狙いは僕だったんです。間違いなく。村の皆は、その巻き添えを受けたんです。」
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